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シエルが悩む一方で、アルベールも書斎で静かに頭の中を落ち着けていた。
自分がトラウマを掘り返すようなことをしたことで、今回シエルに恐怖心を与えるようになってしまったのは分かっている。
けれどアルベールは、そうなると分かっていても、自分は同じことをしてしまったんじゃないかと思っていた。
殺し合いを見ることに慣れてもらおうなんてただの建前だ。
本当はエルヴィドや自国の兵に体を許したシエルが許せなかったのだ。
当たる相手が間違っているのなんて当然分かっているのだが、アルベールはその怒りの矛先を何故かシエルに向けてしまう。
優しくしてやりたいという気持ちとは裏腹に、シエルの心も体もボロボロにして自分に縋らせたい、壊してやりたいという気持ちが潜んでいるのだ。
シエルはあまり笑顔を見せない。
その代わりに、とても綺麗な、透明できらきらと輝く涙を流すのだ。
それが見たくて、自分だけのものにしたくて、何度もシエルに酷いことを繰り返した。
どれだけ酷いことをしても、シエルが自分に向けてくる熱い視線は変わらなかった。
アルベールにとってそれは、シエルは自分のものであると確認できる唯一の方法だったのかもしれない。
けれど今回の非情な行いは、遂にシエルから一つの感情を奪ってしまった。
きっとこのままシエルを傷つけるような行動を繰り返すと、シエルはどんどん自分を拒絶していくだろう。
アルベールは自分がどうすればいいのか悩み、腕を組んで頭を伏せた。
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