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「美味いか?」
「うんっ…」
余りにも早いペースで食べるものだから、アルベールは下手くそながらに会話を挟みながら朝食を食べさせた。
コックに消化しやすくて食べやすいものを用意させておいたからか、シエルは完食して満足そうに手を合わせた。
「シエル、昼にまた飯を持ってくる。それまで一人で待てるか?」
「…………うん。待ってる」
「俺が出て行ってから目を開けろ」
「わ…かった………」
アルベールはシエルが目を瞑っているのを確認し、手錠を掛けて目隠しを外した。
なんとなく逃げないのは分かっているのだが、万一にも逃げ出さないためにだ。
不安そうな顔をするシエルの頭をポンと叩いてから部屋を出て行った。
扉が閉まる音がして、シエルはゆっくり目を開いた。
心臓がばくばくと大きな音を立てて鳴っている。
まさかアルベールに頭を撫でてもらえるなんて思いもしなかったのだ。
さらに、先ほど着せられていたのはアルベールのシャツだった。
アルベールの身長に合わせて作られたシャツはシエルにとっては大きすぎて、それ1枚でワンピースのようになってしまうほどだった。
シエルはアルベールの服を着せてもらったことが幸せで堪らなくて、スンスンと何度も匂いを嗅いだり、服ごと自分を抱きしめたりと、飽きもせずににこにこと服にかまっていた。
「す………き…、…す…き……、すき…っ」
シエルの中でだんだんと膨らんでいく感情はもう止めることができず、恋心と憎しみのジレンマに陥った。
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