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アルベールが書斎に戻ると、バルトはまるでアルベールが今ここに来ることが分かっていたかのようにティーの準備をしていた。
「アルベール様、本日はカモミールティーをご用意させていただきました。少しお気持ちを落ち着けていただければと…」
「あぁ」
バルトはアルベールが座りやすいように椅子を引き、ほんのりと湯気の立つ紅茶を差し出した。
アルベールは普段にも増して口数が少なく、悩んでいるということは誰が見ても分かるほどだった。
そしてその悩みはシエルだということも、バルトは嫌なほどに分かっていた。
「アルベール様、クライトマン皇帝がまた明日こちらへ来ると仰っておりまして…」
「今すぐ呼べ」
「………え?」
「クライトマンを今すぐここへ呼んでくれ」
先ほど追い返したばかりであるのにそんな発言をするとは思わず、バルトはつい聞き返したが、どうやら空耳ではなかったようだ。
バルトにとって、シエルはただの奴隷であるくせに、主人であるアルベールの調子を狂わせる邪魔な存在だ。
このままクライトマンにシエルを引き渡してくれればと祈りながら、伝書鳩に手紙を持たせ、ティエンヌへの方角へと放った。
「バルト」
「はい。どうされましたか?」
「おまえはクライトマンをどう思う……」
「クライトマン皇帝ですか…。私は彼は聡明で国民に優しいお方だと思いますよ」
「おまえの嫌いな奴隷に邪な扱いをしているのにか?」
「アルベール様…」
バルトはアルベールの足元に跪き、目を合わせた。
「きちんと彼を見てあげてください。あの方は奴隷制度に対して批判しております。彼の連れ帰った奴隷たちは今、彼の国で明るく過ごしておられるのです。表向きには性奴隷に酷い扱いをしているように見せられていますが、彼は私が任せられているオークション会場にも何度か足を運んで、オークションの廃止を訴えております」
「どういうことだ…」
「私は一生アルベール様にお仕えすると決めておりますし、貴方を尊敬しております。しかし、クライトマン皇帝の統率力や考え方にも非常に尊敬しているのです。彼はとても心の優しいお方です。貴方が一奴隷に関して悩む気持ちはお察ししますが、私はティエンヌと同盟を結び直すべきだと考えております」
バルトはアルベールを導こうと、解雇されるのを覚悟で長々と意見を述べた。
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