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男同士
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「…離してくれ」
小日向がその子を自分から離れさせ、そう言ったところで俺はやっと我に返った。
「あ、ごめんね?まさかこんな所で会えるなんて思ってなくてつい…」
その子は頬をほんのりと赤く染めて微笑んでいた。
さっき咄嗟に涼と名前で呼んでいたのと、そして今の彼女の様子を見てなんとなく分かってしまった。
(元カノ…だよな…)
「えっと…元気だった?」
「まぁ…」
「話の途中で悪いけど、とりあえずファミレス移動だってさ」
小川が間に入ってようやくその子は他の人達がきょとんとしているのに気がついたらしい。
小川のおじさんは困ったように笑いながら「青春だなぁ」なんて言いながらファミレスがある方に歩きはじめた。
それにつられて皆も歩きはじめ、その子は当たり前のように小日向の隣に並んだ。
「じゃあ行こ?」
「いや…」
チラッと小日向と目が合って、俺は咄嗟に目を逸らしてしまった。
「なんだよ小日向ー!そんな可愛い子知り合いとか俺知んなかったし!小川も知んなかったよな!」
「え?あ、ああ…」
「とりあえず移動しようぜ。あ、お二人さんは仲良くな!」
小日向の何か言いたげな視線に気付かないふりをして、俺は小川の腕を引っ張って小日向とその子から無理やり離れた。
「なんつーか…大丈夫か?」
「…うん。なんかごめんな」
俺と小日向が恋人同士なのを知っているからこそ、きっと俺の今のメンタルの心配をしてくれてるんだろう。
そんな小川に俺はただ笑ってみせることしかできなかった。
なぁ、その子誰?やっぱ元カノ?もうとっくに別れたんだよな?なんでそんな仲良さげなん?つか、距離おかしくね?
今すぐここで小日向に聞きたいことは山ほどあるのに、そのどれも口にすることなんかできない。
俺と小日向は男同士で、でも恋人同士で、なのに、小日向の隣を歩く女の子に俺と小日向は付き合ってるということすら言えない。
俺はここで初めて、男同士で付き合うということの意味をちゃんと理解した気がした。
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