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2-1 幸せにしたい side 倭人
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今朝は、母さんが上機嫌だった。
ニコニコ笑顔で、俺の斜め前に座り。
クロワッサンをお代わりしながら、ゆっくりと紅茶を飲んでいる。
いつも、眉間に皺を寄せて。
屋敷にいるときも、部下を引き連れて指示をしている多忙な姿ばかり見ているのでなかなかレア。
同じ時間に朝食とってるのは、かなりレア。
高校の入学式以来じゃねーかな。
「なんであんなに、ニコニコしてんの?」
隣に座ってる兄貴をつつく。
俺の一回り上の清人(きよと)、28歳。
長髪を無造作に後ろに束ねて、表情は前髪と黒ぶちの伊達眼鏡ですっかり隠れて見えない。
俺よりでかいくせに、わざと猫背を作って少しでも小さく見せる努力をしている。
無精ひげまで生やしていたときは、父さんより年上に見えていた。
大学卒業後、無職でずっと敷地から出ようとしない。
「アホか。
飛鳥と陽太さんがその分イライラしてるんだから、察しろ」
溜息混じりに、声を潜め。
前をちゃんと見ろと言われて・・・あ、本当だ。
母さんが不気味なくらい機嫌がいいから、気付いてなかった。
その両隣にいる父さんと姉貴の眉間には、くっきり皺が寄っていた。
父さんは、隣の母さんを睨みつけながらバリバリ音を立ててウィンナーに齧りついている。
姉さんは、黙々と皿の上を片付けているけど無言。
目が、死んでる・・・
「ハルが怯えて、食事にも手をつけてないだろ」
兄貴の身体が邪魔して、遙馬(はるま)さんの姿は横並びで全然見えないけど。
兄貴の向こう側、座っているはずのその前には料理が並んだままだ。
カトラリーを握った形跡も無く、次々お皿を置かれてその前は溢れそうになっている。
元々、食は細いみたいだけど、一皿も減ってないのは確かに怯えてるんだろな。
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