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ファッションに興味はないが、今日という日は俺にとって特別なものなので、クローゼットに頭を突っ込み、服を漁る。いっそ、全人類がジャージを着なくてはならないと義務づけられたらいいのに。デザインはさほど変わりないから、そうすれば迷うのはせいぜい、どのメーカーもしくはブランドのものを着るか、くらいになるはずだ。
かれこれ一時間は着る服に迷っている。スマホを見たら、そろそろ支度をしなければならない時間になっていた。
あまり気合いを入れても享にからかわれるだけだと思い、黒のカットソーに灰色のチノパンを選んだ。アクセサリをつけるか迷って、やめる。いつもと同じような身なりでいいだろう。
頬を軽く叩いて緊張を解した。
今日は俺の童貞卒業式である。あまり気張るのはどうかと思うが、普段どおりでいられるかといえばそういうわけにもいかない。享の家へ行くにはまだ時間があるけれど、僅かに緊張すらしている。
念入りにシャワーを浴びた。マイサンの皮をぐいぐい剥いて、被る部分もしっかり洗った。
髪を乾かしながら鏡を見ると、何の面白みもないショートカットがそこにあった。髪を流すようにセットしようかと思い、ヘアワックスを手にしたが、洗面台に戻した。
「あんた、時間は? そんなに鏡をじろじろ見たって、目つきの悪さは変わらないよ」
姉が洗面所に顔を出した。
「ほっとけ。目つきはそんなに悪くないだろ」
「はいはい、切れ長、切れ長」
「そっちは? 休みの日はいつも昼過ぎまで寝てるくせに」
社会人である姉の休日は、せいぜい午後一時から始まるはずなのに。
「友達と映画を観る約束してるからさ。支度して出ないと」
姉が服を脱ぎだすものだから、ぎょっとする。
「おい。俺がいるんだぞ」
「弟なんて、そこらへんに生えてる草と同じだって」
「そうじゃあなくて、見たくないものを見せるなってこと」
「あんたねぇ」下着姿になった姉が眉を顰めた。「こんなに美人なお姉さまに何ってことを言うの」
「せめてブラとパンツの上下を揃えてから言ってくれ」
「これはナイトブラなんだからね。な、い、と、ぶ、ら」
そんなもの、知るか。ため息をつき自室に戻った。
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