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職場から帰る前に両親の呼び出しを受け、圭吾は実家に帰った。久しぶりに訪れる実家は懐かしい匂いがした。きれい好きな母のおかげで、家の中はきちんと片付いている。
母に出迎えられ、圭吾はリビングへ向かった。長テーブルの前に父がいて、その隣に母が座るので、向かい側に腰を下ろす。
「そろそろ、話をしたいと思ってな」真剣な表情を浮かべ、父が言った。
「何の話?」
「事故の、ね。加害者の話なの」母が答える。「すぐには言えなくて……圭吾がその足に慣れた頃に、と思っていたのだけれど」
「事故の原因は、運転していた男の病だったんだ」
それはすでに知っている情報だが、圭吾は黙って話に耳を傾けた。
「発作が起こって、気絶をしたらしくてな。アクセルを踏んだままおまえたちに突っ込んだと聞いている。それで、相手なんだが……発作が原因だから、どうなることかと思っていたが、危険運転罪の適用がされ懲役一年三ヶ月の判決が出たんだ。控訴期間を入れるとそろそろ出てくる時期だから、おまえには話しておかなければと思って」
「懲役、一年三ヶ月、か」圭吾は呟いた。
人生をめちゃくちゃにしておいて、たったそれだけの懲役とは。あの事故さえなければ、今、これほどの混乱と絶望を抱えることはなかっただろう。
「法律が変わっていなければ、もしかしたら罪に問われなかったかもしれないの。でも……そうね、短いわよね」母が涙ぐむ。
「加害者は若い。当時二十歳だ。そこも考慮されたのだろう。事故当時は大きなニュースになった。何せ、代議士のひとり息子らしいからな」
僅かに緊張した空気が流れる。ふたりはこちらの様子を窺っているようだ。
「加害者が出てこようが、出てこなかろうが、現状は変わらないから。うん、大丈夫。俺のことはそんなに心配しないで」
笑え、と自らに命じ、圭吾は口角を無理やり上げる。
夕食は両親ととることになったので猛にそうメールした。両親と夕食をとりながらたわいもない話をし、夜が更ける前に実家をあとにした。
*続きは同人誌でお楽しみいただけると幸いです。
3月5日に開催されるJガーデンにサークル「のしこま」で参加いたします。
スペース Bホール(市松の間)た10a 文庫サイズ、264P
※2017.12月追記。同人誌は完売いたしました。同人誌になる前の作品。ネット連載分の掲載先は作品概要(top)にございます。bloveに持ってくる予定は今のところございませんので、よろしければURL先でお楽しみいただけると幸いです。
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