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太陽の人
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教科書の入ってないリュックを背負い、靴紐を結ぶ。
髪のハネを両手でおさえて一つ息を吐く。
「…行こ。」
月曜日。
やっと目立つ傷が治った。
今日からいつも通りの学校だ、休みは終わり。
踏み出した外は太陽が眩しくて目が上手く開かない。
一人きり 学校へ向かう。
あの日を境に森宮と距離が出来た。
買い物に行けない俺の代わりに食べ物を買って来てくれたけれど、それは全て外のドアノブに引っ掛けられていた。
『お金は後でいいから』というメモだけを残して。
本当は会いたくて 話したくて仕方なかったけれど、俺はそんなこと言えるわけ無かった。
嫌われて当然だ。
むしろ、好かれている方がおかしい。
「怖くない。怖くない。」
誰もいない道路の真ん中で呟いた。
強くなるんだ。
1人でも大丈夫、誰にも怯えない。
自分へそう言い聞かせた。
あぁ 胸の奥が痛くて仕方ない
学校の門をくぐって周りを見渡す。
突っかかられた原因の眼帯を外してポケットへ入れる。
もう腫れは引いているからきっと大丈夫。
もし何か言われたって今ならもう泣かないで耐えられる。
一歩一歩教室へ近づいてくる。
なんだ 案外簡単だ。
このまま今日一日きっと平和に終われる。
「あれ、ずっと休んどった子ちゃう?もう来れんの?」
「え……?」
振り返った先、太陽みたいな金髪に目を奪われる。
綺麗な色だな とだけ思って目を閉じた。
もう、何も怖くない。
「…顔色悪いやん、大丈夫?」
「大丈夫。」
「ほんま?ならよかった。はよ行かんと遅刻するし、行こ行こ。」
「え、…っ…わ、…」
ぎゅっと手首を握られて引っ張られていく。
この人、誰だっけ。
確か同じクラスで席が近くて。
考える間もなくスタスタと歩いていく。
心の奥の 孤独 が少し薄まった気がした。
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