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二つの影
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放課後、チャイムと同時に三上が振り返る。
「羽白は部活入ってないんやんなー?」
「うん。」
「それじゃ、俺は部活やから先行くな。また明日。」
「部活、頑張って。また明日。」
カバンを担いで走っていく三上に手を振ると後ろからその手を握られる。
誰だ、と振り向くともう何日も話せてなかったその人が少し難しそうな顔で立っていた。
「…森宮。」
「えっと…帰ろ、…っか。」
「…ん。」
顔を見あげても目は合わない。
そのまま会話もせずに靴箱へと向かう。
空気が重くて、俺も何をいえばいいかわからない。
一緒に帰ろうと誘いをもらった時はあんなにも嬉しかったのに今は気まずくて仕方ない。
森宮が俺のことを今、どう思ってるのかわからない。
「怪我、治ってよかった。」
「あ…ありがと。割と、跡残らなかったから俺も安心した。」
会話が続かない。
今まで、どんな風に話してたんだっけ。
チラリと森宮の方を見ても前を向いたままで表情すらわからない。
もうどうすればいいのかわからず途方に暮れているとふと、森宮の足が止まる。
「森宮…?」
「あー…ごめん。正直に聞くんだけどさぁ…
俺、羽白に嫌われてる?」
一瞬その言葉の意味がわからなくて。
振り向いた先、少し俯いた森宮を見たまま俺はしばらくの間何も言えなかった。
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