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寝ても覚めてもずっと、羽白のことを考えている気がしていた。
確かに傍から見たら恋でもしてるみたいだ。
恋、なんて決定的な証拠がないもの苦手だ。
「そうだ。森宮、いつから泊まりに来る?」
「んーテストが来週の火曜からだし…週末から泊まりたいかも。」
「わかった。それなら金曜日の帰りそのまま…とか?」
「そーしよっか。その時さ、前言ってたパスタ作ろうよ。」
「ん。…楽しみにしてる。」
横を歩く羽白が首を傾げくしゃりと笑う。
素直で、優しくて馬鹿正直で。
そんな羽白が好きなのかもしれない。
それなら…羽白をあんな風に怯えさせたものが許せない。
「森宮、行き過ぎ。家ここなんだけど…」
「え?あ、ぼーっとしてた。自転車止めてくるから先言っといて。」
「わかった。」
裏の駐輪場に自転車を止め、正面玄関へ向かう。
少し向こうに羽白の影が見える。
こうやって2人でここに帰ってくるのはいつぶりなんだろう。
離れている時間がすごく長く感じた。
「…ホント、恋する乙女みたい。」
ため息をついて頭をかく。
こんなの俺らしくないしなぁ、なんて思って駆け出すと足元で鈴の音が鳴る。
立ち止まり振り向くと小さなストラップが落ちているのに気付く。
「落し物?これ、どっかで…?」
青い鈴の付いたストラップ。
どこかで見たことがある。
どこで見たのか思い出せない。
確か、すごく身近な…?
「あ、兄貴の家の鍵のだ…!」
家帰ったら渡しとこ、とポケットに入れ走って羽白の元まで向かう。
ちょうどエレベーターが来たらしく振り向いた羽白へ小さく頭を下げる。
「ギリ間に合ったな、セーフ。」
「遅いから先行っとこうかと思ってた。」
「ごめんごめん、落し物拾ってさぁ。」
ポケットに入れたストラップを取ろうとして思考が止まる。
「…なんで、ここに落ちてたんだ?」
兄貴はここに一度しかきたことがない。
前は歩きで来てたから駐輪場へは来なかったはずなのに。
それなのに、なんで?
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