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物語は単純だ。
主人公のソウマは歌手を目指して上京するため一人で練習を重ねている。
しかし、親と意見が合わず上京を反対されてしまう。
反抗期を過ごしながら高校卒業と共に一人、誰にも言わず東京行きの飛行機へ乗り込む。
飛び立つ飛行機の窓から外を見ると反対していた両親が大きく手を振り「頑張れ」と叫び見送ってくれた。
…っていう、なんとなく都合のいい話だ。
「ソウマは両親に見送られどのような気持ちになったか。50文字以内で簡潔に答えよ。」
「…頑張ろう。とか?」
「んー…一応模範解答は"自分を育ててくれた両親への感謝と今までの反抗期を悔やむ後悔の気持ち"だな。」
「…感謝と後悔。」
「まー…ココに大体そのまま書いてあるんだけどさ。」
納得がいかないのか首をかしげては答案用紙へ書き込むことはない。
羽白が国語が苦手だと言ってたのはこういう事か、とようやくわかった。
登場人物の気持ちがわからないなら問題は解けない。
「…今まで酷い事言われてたのにすぐ許すんだ。」
「物語だしなぁ。都合良すぎる感じは確かにあるよね。羽白ならなんて書く?」
「なんでココにいるのか…わからなくて不思議がる気持ちとか…?」
「羽白とソウマは仲良く慣れなさそうだな。…テストの問題なんてそこら中に答え書いてるから。探して書く方が楽だって、多分。現実ではそうはいかないけどさぁ。」
「森宮はヒトの気持ちわかる?」
ようやく赤ペンで答えを移し始めながらそう問いかけられる。
…ヒトの気持ち。
わかるかわからないかと言われたら多分わかる方…だよな?
「なんとなく。」
「じゃあ、今の俺の気持ち。なんだと思う?」
「んー…不安になってる。」
「…なんでわかったんだ?」
「当たった?羽白、すぐ顔に出るからわかりやすいよ。何に不安がってるかまではわかんないけどさ。そんなに深刻に考えなくてもいいよ。」
「そっか、…ありがと。」
顔を上げてくしゃりと笑う。
その不安の種がほんの少しでも、取り除けたら…。
もっと満面の笑みを見せてくれるのかもしれない。
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