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「…疲れた。」
「だね。もう12時回りそうだし、先にしゃわー入ってきなよ。」
「そうする。すぐ上がる。」
「はーい。」
シャーペンを置いて立ち上がる。
ずっと同じ体制でいたから足腰が痛い。
パジャマとTシャツ、下着を持ってお風呂場へ向かう。
こんなに夜ふかしをするのは久しぶりだ。
脱衣場で服を脱ぎ、すぐに熱いシャワーを浴びる。
湯気で薄くぼやける視界に少しだけ目を閉じる。
「ん、…」
まだ体の傷は消えない。
シャワーの先が傷に触れる度ジンジンとした痛みが皮膚の下で浮かんでは消える。
鏡に映った自分の体を見てため息をつく。
傷だらけで汚い。
「…さっさと上がろ。」
出来るだけ鏡を見ないよう、下を向きながら頭や体を洗う。
森宮にはバレないようにしないと。
…これ以上心配かけたらダメだ。
体を拭きパジャマに着替えそっと部屋へ戻る。
真剣に勉強してるのか森宮は気付かない。
「…お風呂空いたよ。」
「んー……ん?びっくりした、周りの存在忘れてた。…てか、頭ちゃんと拭いた?」
「拭いた。」
「水滴ってるし、パジャマ濡れてるってそれ。…あーもう。こっちおいで。」
「頭ぐらいひとりで…」
「拭けてないから言ってるんだって。ホント、抜けてるというか関心がないというか…」
手に持っていたタオルで乱暴に頭を拭かれる。
乱暴なのに少し優しくて痛くない。
目を閉じると、まるで小さい頃と同じで両親のことを思い出してしまう。
『蓮、イイコでお留守番できる?』
『うん。』
『それじゃ明日の朝には帰ってくるからね。イイコでおやすみしててね。イイコにしてたらママとパパも元気で帰ってくるからね。』
『うん。』
何日も玄関の前で座っていたのに、両親は帰ってこなくて。
訪ねてきたのは知らない大人だった。
「よし、拭けた。」
「ん、…」
「どーいたしまして。…羽白?」
「……ん。」
「どうした?痛かった?」
「ううん、何でもない。森宮もシャワーどうぞ。」
「それじゃ、お言葉に甘えて。眠かったら寝ててもいいよ。」
「単語帳作りながら待ってる。」
森宮が風呂場へ行くのを見送り、机に突っ伏する。
…あんまり良くないことを思い出した。
イイコで ちゃんと待ってたのに。
なんで帰ってこなかったんだろう。
あぁ。
もう、何年も前の事なのに。
思い出すだけで 死ぬよりも辛くなる。
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