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秘密
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しばらく壁に持たれたまま目を閉じていた。
今、何時だろう。
体中が痛くてうまく動かない。
震える手で携帯を引っ張り出して画面を見る。
「…9時、……」
ゆっくり歩いて帰ったら9:30くらいだ。
森宮はもう呆れてしまってるだろう。
個室に鍵をかけて便器へ座る。
床を見るといくつか血の跡が見えた。
備え付けのトイレットペーパーでそれを綺麗に拭き取り便器へ流すとピリピリとした痛みを感じる。
完全に切れてるな。
放っておけばいつの間にか治るからいいや。
もう…どうでもいいや。
服を元通りに着てさっき来た通りの道のりを歩いていく。
頭の中が空っぽになったみたいだ。
森宮に会うまでにはまた元気にならないと。
頬を両手で叩いて目を覚ます。
大丈夫。きっと笑える。
「……ろ。」
家に帰ってまずお風呂に入ろう。
それからごはんをたべよう。
その後に勉強して…
「…羽白!」
「ひ、っ……、!?」
「なに、どうしたん…?声かけても振り向かんから人違いかと思ったやんか。」
突然後ろから名前を呼ばれ体中の力が抜けその場に崩れ落ちてしまう。
振り向くと大きな鞄を肩から下げた三上が驚いた顔で俺の目の前に立っていた。
「…ごめん。」
「こんな時間になにしとったんー?」
「えっと、…気分転換。勉強、行き詰まったから。三上は?」
「なるほどなぁ。俺は部活帰りやな。もう9時過ぎてるやろ?はよ帰らな危ないで!送ってこか?」
「ううん、大丈夫。…家の方向反対だし。一人で帰れる。」
「ほんま?」
頷いて立ち上がると薄暗い中でも三上が笑顔になるのが見えた。
「うん、…ありがと。」
「ええよええよ!また明日な!」
「ん、…また明日。」
手を振って三上が帰って行くのを見送る。
…大丈夫だ、上手く話せた。
この調子ならきっと森宮の前でも違和感なく話せる。
街灯の少ない道を一人、ゆっくりと歩いていった。
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