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昼下がり
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何も分からないままでごめん。そう、南倉は詫びた。
どうして謝るんですか、とすぐさまユキトは返した。
謝るのはユキトの方だ。復讐復讐と探偵を振り回したのに何も出来なかった。南倉は大人の自分を悪者にし、子供のユキトは探偵を責めた。
でも、それは間違いだ。
例の母子の件もあるが、結局は依頼人が覚悟をしきれていなかったのだ。人を傷付ける。
今まで傷付けられて来た分、傷付けられる痛さが分かってしまう。心理的な『痛み』じゃない、物理的な『痛さ』だ。『痛み』は人それぞれだ。
それに体の暴力より心の暴力が悪いと言われるが、体を傷付けられると心もダメージを負うのを少年は知っている。血縁者からなら尚更だ。親に虐待されて喜ぶ子供は居ない。
――中途半端だ、俺は…
男達への怒りは少しも翳らないのに、実行には移せない。稲田を愛する気持ちは本物なのに、それを貫けない。
『ゆっくり休んで』
南倉には本当に何でもお見通しらしい。ちょくちょくある探偵からの連絡には、口癖の如くこんな言葉が挟まるようになった。行き場のない思いを持て余して苦しい中学生を、慮る。
「俺かっこわるい…」
「え?」
口に出してしまったらしい。時任の聞き返す言葉が耳に届く。
「ううん、何でもないよ」と軽く応えて仰向けになる。そして見慣れた執事を見つめた。
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