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罠
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カタン。
その時、玄関の方から小さな金属音がした。ユキトは顔を上げる。
――南倉さん?
探偵はインターホンも鳴らさずそのまま入ってくるし、訪問者があっても決して出ないように言われている。
この部屋の鍵は特殊で、オリジナルがあっても複製不可能な仕様らしい。そのオリジナルを持っているのは当然南倉だけで、ユキトが中から開けない限り彼しか自由に出入り出来ない。
マンションの管理人に対してどうしているのか分からないが、そこは南倉だ。うまく乗り切っているのだろう。
「…?」
しばらく待っていたが、一向に鍵を回す気配がない。しかし気のせいの音とも思えない。緊張したユキトは立ち上がり、柱にあるホームセキュリティボタンに目を向ける。非常事態に押せと探偵に言われている。
――いや、まだ何も無いし…。と、とりあえず、様子を…
ユキトは胸を右掌で押さえ深呼吸をして、ゆっくりと居間を出る。そして、そっとキッチンから玄関を盗み見た。
「あ…」
ユキトは脱力した。
ドアの半透明な郵便受けに、ハガキらしきものが入っている。マンションのエントランスにポストはあるものの、たまにこうして直にダイレクトメールなどが差し込まれる時があった。
「なんだ…もう、びびっちゃったじゃん」
過剰反応してしまった羞恥を文句で誤魔化しつつ、ユキトは郵便受けを開ける。
もし急ぎの知らせだったら南倉が来た時にすぐ渡さなければ。そう思いハガキを裏返したユキトの動きが、止まる。
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