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対峙
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どろり。
押し留めていた、長谷部の本音が溢れ出す。
触れられている指先から毒が流れ込んでくるようだった。ユキトは硬直する。
「貴方が様々な傷を負いながらも、翌朝俺に挨拶をする。笑顔で、でも憂いを含んだ目で。全てを知る俺の前で健気にも。…貴方の表情、たまりませんでしたよ」
頬を滑り落ちた指はユキトの心臓の辺りをトントンと示す。
「ここが高揚するんです。『なんて憐れで惨めな子だ』ってね」
――そういう、ことか
ユキトは動けないまま、静かに理解した。
15年前の事件の時、幼かったのは南倉だけではなかった。
長谷部もまだ11歳で、小学生で。守られるべき盛りに、しかも傷心中に家族と引き離され、居心地の悪すぎる親戚と共に暮らして。
ユキトには、否ユキトだからこそ分かる。
復讐心を己の支えにしても限界がある。まっさらな根底が、悲鳴を上げる。
長谷部はおそらく慰めが必要で、欲しかったのだ。
そして、その慰めの対象が。
――俺、だったんだ
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