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対峙
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ユキトは目を、耳を疑った。
あまりにも望むから、己の脳が勝手に作り出したのかと思った。
でも隣からの驚きに息を呑む音と、その弾みで解放された体が真実だと伝える。重力に崩れそうになる体を少年は腕で支えた。
幻覚でも、幻聴でもない。
ユキトの恋人であり長谷部の実弟が、目の前に立っていた。
「南倉…!!」
ライトをバックに現れた闖入者の名を長谷部が呼ぶ。その頭には拳銃が突き付けられていた。ユキトが唖然とする前に南倉が口を開く。
「頼む、沙羽。これを俺に撃たせないで」
『サワ』――サハデーヴァ。音にされた名詞が長谷部の本名だと御曹司は直感する。南倉の兄は依然虚を衝かれていた。
「お前、何でここが…」
確かに犯人が述べたばかりだったのだ、助けが来ない理由を。兄の疑問に弟は坦々とヒントを告げる。
「アンタと同じ方法だよ。俺の場合は発信器だけど。途中でエリア外になって焦ったよ」
「まさか隣県まで行くとはね」、その南倉の言葉に長谷部と同じくハッとしたユキトは自分のズボンを見た。
ポケットには――例の御守り。
「ごめん、ユキトくん」と大切なものを再度利用された少年に詫びると、ユキトは急いで首を振り否定した。
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