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対峙
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「俺…ッ俺の方が、ごめんなさい…!」
約束を破ってマンションから出て。
両親がとんでもない事を仕出かして。
そして――そんなに汗だくになるまで、探し回らせてしまって。
少年を抱えて階段から駆け降りても涼しい顔をしていた探偵の額から、否それどころか髪からも汗が滴り落ちている。
発信器が途中で機能不可になったと言っていた。中学生の恋人を探して、きっと南倉は走り回ったのだ。
胸が詰まって何も言えなくなったユキトに、南倉はそれでも笑顔を向けた。
全てを包むような優しく甘い顔。だから、少年は益々涙を零す。
「っ!?…ぐッ」
しかし、南倉が意識を逸らした一瞬のその隙に。ユキトは、犯人に再び囚われた。
腕を首に回され強く締め付けられる。息が出来ず足掻く少年の頬にナイフが押し当てられた。先ほど抉られた首の痛みを思い出しユキトは硬直する。
「動くなよ…南倉」
横からの低い声。まるで自分に言われているようだった。凄み弟を睨む長谷部にユキトは物理的でない苦しさを覚える。
――やめて…
そんな顔で、家族を見ないで欲しい。
何よりも大事な筈なのに。
それは弟の方も、確実に同じ気持ちなのに。
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