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対峙
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命じられた通り南倉は動かない。体は勿論、表情も。
しかし「手紙」と、口だけぽつりと動く。
「沙羽が高校に入ってから、俺達の手紙って来た?」
どこか切羽詰まったような、押し殺した声。
長谷部は眉をひそめつつも、「出していないものが届く訳ないだろう」と嫌味も込めて返す。
すると、不思議な事に南倉の表情が和らいだ。「そう」と呟き。
「ごめん」
と。
頭を、深く下げた。
長谷部の記憶の中にある弟は、良くも悪くも自由。
傍若無人ではなかったが謙虚でもなかった。兄を呼び捨てにするし謝る時も調子が良くて、でも憎めなくて――
だから、長谷部は開いた口が塞がらなかった。うっかり人質を逃がしてしまいそうな位、ぽかんとした。
しかし、確かに南倉は真摯な態度でもう一度詫びた。
「俺のせいで、沙羽を一人にしてごめん」
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