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対峙
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ユキトは状況も無視して駆け出しそうになった。
南倉が小さな子供みたいに思えて、走り寄って抱き締めて、かつて言われたように『貴方のせいじゃない』と。諭したかった。
なんて人なんだろう。
他人の、しかも憎い相手の息子を許して自分の事は許してないなんて、この人は。
しかし、拘束されている少年にそれは叶わない。長谷部は身動く質をたしなめる力を強めた。しかしながら、その頭脳は別の事を思う。弟の行動に動揺しながらも問うた。
「…南倉。『俺達の手紙』って、何だ?」
手紙は祖父母からの手書きの文章だけで、弟からは一切無かった。だから、先程の南倉の発言は不適切だ。
しかし、その更に前の言葉を思い出し長谷部は目を見開く。「お前」と南倉に投げ掛けた。弟は顔を上げる。
「やっと、謝れた」
その南倉の言葉で、長谷部は明確に悟る。
小学校高学年になり立ち直ってきた南倉は、祖父と共に謝罪の手紙を兄に出していたのだ。それなのに宛名の元に届いていないのは、親戚が握り潰していたのに他ならない。面倒臭かったのか、金蔓の長谷部を情に流されないようにする為か――おそらく両方だろう。
しかしとりあえず、実は家族の手紙の『激減』も『音信不通』も無かったのだ。祖父と、そして南倉は相も変わらず送り続けていたのだから。
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