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再会
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沙羽は意外だった。彼は自分が仕出かした事に対しての客観的な自覚はある。
父母を殺され、大切な人を傷つけられた被害者の少年は二度と目の前に姿を現さない、いや現したくないだろうと思っていた。
「こんにちは、お久しぶりです」
なのに、顔を上げた御曹司はこんな挨拶まで宣う。にこっと明るく微笑まれて、まだ沙羽は己が『朝霧家の運転手』であるような錯覚を覚えた。
「…何の用ですか?」
だが、錯覚は錯覚だ。
青年は用意されてある椅子に座ると素っ気なく尋ねる。「あと20分」と告げる警察官の声が背後から聞こえた。
沙羽は今、身柄拘束期間中だ。連日、警察官や検察官による厳しい取り調べが行われている。
が、それで窶れるほど南倉の兄はヤワではない。犯人の容姿は出頭した時と何ら変わらなかった。
むしろ。
「坊っちゃん…どうしたんですか?その顔」
少年の方が窶れている。顔色が悪く目の下にクマが出来ていた。犯人が逮捕されたというのに――自分で言うのもアレだが――妙な事だ。思わず沙羽が突っ込むと、ユキトはちょっと赤くなって誤魔化すように苦笑いする。
「もう俺、『坊っちゃん』じゃないです」
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