アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
番外編Ⅰ
-
『本当に申し訳ありませんでした』
意識が戻り、面会謝絶が解けた日。
さっそく会いに来てくれた坊っちゃんの隣に居た彼と初対面した。深々と頭を下げられ、こちらが恐縮してしまうほど謝罪された。
消された15年前の事件も聞いた。
壮絶な過去に、私は只ひたすら困惑した。確かに旦那様と奥様は善人では無かった。でもまさか、人を殺していたなんて。間接的だろうが関係ない。許される事ではない。
そう、頭では理解できる。けれど感情が置いてきぼりだった。
何故なら私は朝霧家に長年仕えてきた。情も恩もある。だから、南倉さんもあんなに謝ったのだろう。無関係の私を怪我させた事は元より、上司と仕事を失わせてしまった事。
そして恐らく――坊っちゃんの傍に居られなくなった事も含めて。彼は聡明だ。もしかしたら私の悔いにも勘付いているかもしれない。
「…?坊っちゃん、どうしました?目元が少々赤くなっております」
坊っちゃんが、旦那様達の罪を公にしようとしている――もちろん最初は止めたが――のは知っている。そして、その下準備でろくに寝ておらず日々窶れているのも。坊っちゃんは頑固だから注意しても聞いてくれない。困ったものだ。
しかし、それでも寝不足で充血したにしては不自然だった。
まるで――
「…泣いたのですか?」
その時、私の脳に深く刻まれた記憶が蘇りそうになり、ジワッと口内に苦いものが広がった。抑えるため目の前の坊っちゃんに集中する。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
196 / 229