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番外編Ⅰ
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微かに水の流れ落ちる音がした。
雨の可能性を思ってから、今宵の天気を思い出し直ぐさま打ち消す。
――室内…浴室か
広大な朝霧家には幾つかの浴場があり、その内の一つが近くにある。
ほぼ坊っちゃん専用と化している所なので、シャワーでも閉め忘れたのだろうと軽く考えてそちらへ足を向けた。小学校も中学年生となるのにうっかりさんだな、と苦笑する。
しかし、それも浴場の前に来るまでだった。
カタ、カタンと物音が連続して聞こえた。思わず刷りガラスの扉を見つめる。電気は点いていない。故に誰も入浴していない、筈だ。
なのに、今のは物が重力に負けて自然に落ちたものではない。人為的に『動かした』音だ。私は一気に緊張する。
――まさか…泥棒?
セキュリティの優れているこの家に侵入者とは考え難いが、有り得ないとも言えない。
深呼吸を幾度か行い心を落ち着ける。そして取っ手に手を掛け、引き戸を静かに開いた。
やはり中は暗い。情けばかりの月明かりがあるだけだ。脱衣室を一歩、二歩と慎重に進む。
また、不自然な音が浴室で鳴った。心臓が跳ねる。
近くのモップを手探りで掴む。暴力は嫌いだが、そんな悠長な事を言っていられない。執事として朝霧家を守らなければ。
頑張れ私。自分を励まし覚悟を決め、浴室に乗り込む。
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