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あの日…
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文化祭が終わり、美術部の活動も
落ち着きを取り戻していた。
体育祭は、運動部が中心なので、僕たちには
あまり関係がなかった。
「波瑠。この後、少しいい?」
「うん。いいよ!」
夏希くんに呼ばれて行ったのは
あまり人が来ない旧校舎の第二図書館。
思いつめた顔で黙って座ること十分。
夏希くんは、覚悟を決めたように顔を上げて
真剣な表情で僕を見ながら
「俺、波瑠が好き。恋愛感情として、好きなんだ」
夢なら覚めないで…。
このまま、夢を見させて…。
そんな事を思うぐらいに僕は、とても嬉しかった。
この時の、僕は始めて素のままの僕で
僕の気持ちを口に出した。
「僕も。僕も、夏希くんが好き!」
一生言う事はないと思っていた。
誰にも知られる事なく、死んでいくと思っていた。
ーこの時、違和感に気づけなかったのは
僕の精神が、壊れてしまっていたから…ー
この日。僕は夏希くんの家に泊まった。
夜には、ベットの上で夏希くんにたくさん愛された。
「これ、波瑠あげる。ずっと付けてて、
幸せになれるから。俺、波瑠が幸せならそれでいい
それが、俺の幸せだから。必ず幸せになってね」
それは、指輪をチェーンに通したネックレスだった。
夏希くんが付けているものもお揃いだ。
「わぁ…。綺麗!ありがと、夏希くん!僕も、僕も
夏希くんが幸せなら、それが僕の幸せだよ
それに、僕は夏希くんの他には何もいらないから
ずっと僕の隣で笑っててくれる?」
「もちろん、約束するよ!」
「夏希くん…。ありがと!約束だよっ」
これが、僕と夏希くんの最後の会話だった
次の日の朝。
僕が目を覚ました時には、夏希くんの姿がなかった。
不安に駆られ、家の中を探すがどこにもいなかった。
その時、僕の目にはテレビの画面が映る。
何気なく電源を入れれば、深夜に海に入り
自殺したと言ったニュースが流れ
僕は、その場に崩れ落ちた…
映っているのは、変わり果てた夏希くんの姿であった。
ーその時、僕は色を失った…ー
それは、かつて夏希が褒めてくれた
僕の、不思議な世界観から
作り出されるものでもあった。
ー泣き過ぎた僕は、声が出なくなったー
あの時、僕が気づいていたら…。
そんな後悔ばかりが僕の心を覆いつくした。
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