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第1章
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ああ、何っていい天気なんだ。部屋の中にいても、カーテンの隙間から眩しい光がこぼれてくる。
こんな日の朝の空気はとても澄んでいるように感じる。いくら蝉が激しく鳴こうと、すっきりとした空気が気持ちを落ち着かせるはず、なのに――……
「こら。海斗、起きろ。朝食をとる時間が無くなるぞ」
ベッドに腰掛けて覗き込んでくるその顔。やっぱり好きだなぁ……って、違う、違う、断じて違う。
ショートカットの栗色の髪がふわふわで、そこに指を通したいなんて思ってない。くりっとした大きな目が可愛いだなんて思ってない。本人は気にしているようだがさほど高くない身長と、その細い腰に手が疼く……なんて、思って、ないっ!
「おい、聞いているのか? まったく。お前みたいな弟を持つと本当に苦労するよ」
その憎まれ口を叩いてくる唇――もう少し近づいてきて欲しい。そうしたら肩をぐいっと引き寄せて、キスをするのに……なんて、馬鹿なことは考えていないっ!
「わ、わかってる」
ため息が出てしまった。
この、三十歳なのにどこからどう見ても高校生くらいの歳にしか見えない兄貴。そんじょそこらの女子なんて目じゃない程に可愛らしい外見をしている。けれど、中身は男前なんだよな……そのギャップがまた、この胸をキュンと――させ、ないっ!
落ち着け。落ち着け俺よ。何が悲しくて自分の兄貴に恋愛感情を持たないとならんのだ。しかも相手は男。どう考えても不毛だ。
ベッドから起き上がると、兄貴の顔が近づいてきた。
「昔から変な奴だったけれどお前、最近特に変だぞ? 大丈夫か?」
大丈夫じゃあなくなるから、その可愛い顔をどこかにやってくれ。
「変じゃない」
短く返事をし、誤魔化す。ああそうだよ。俺は確かに変だ。この兄貴が、どうしても、どうしても可愛く見える。近くにいても、遠くにいても、とにかく兄貴のことばかり考えてしまう。昔からそうではあったのだが、最近はそれが特に酷くなってきていて――心の中で、名前を呼んでしまう。優斗、と。
しかしそんなものは間違っている。兄弟なのだ。同性なのだ。けれど、この勝手に暴れまわる熱がどうしても消えない。
立ち上がり、頭をがしがしと掻き回す。
「お前、本当に背丈が伸びたなぁ。俺よりもそんなに高くなるのじゃあないよ」
「兄貴が小さいんだ」
「おっ。そんな事を言ってもいいのか? 嫌がらせのキスをするぞ」
にやりと笑っているつもりなのだろうが、その笑みはどこからどう見ても愛らしい。畜生。それは嫌がらせにならない――訳が、ない。嫌がらせになる。そう、なるんだっ!
唸ると、はははっと朗らかに笑われた。ああ、何って能天気なんだこの兄貴は。
天を仰ぎたくなる首へ力を入れ、何事も無いような顔をつくる俺の努力をわかってくれる奴はこの世にいるのだろうか。
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