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「待てまてまてぃ!」
うわぁぁぁぁ湊の唸るような声が聞こえてきたぁぁぁっ!
怖くて後ろを振り向けない。
「海斗! 考え直せっ!」
航の声。そして……おや? 悠馬の声は聞こえない。
気になってちらりと背後を振り向くと、おお湊さんその顔は、悪鬼のコスプレですか、ね。怖えぇぇぇっ!
航は焦ったような表情を浮かべている。その隣にいる悠馬。
どうして? 何だか、真剣なような……泣きそう、なような?
「おい、何なんだこの茶番は」
呆れたような優斗の声で我に返る。
そうだ。誰がいようと。ここがどこだろうと。
もう決めたんだ。この気持ちを伝えるのだと。
腹に力を入れ、優斗に向き直る。
真剣に目を、真っ直ぐ見つめた。
「俺、優斗が好きだ」
「ああ、ありがとう」
やっぱりこれじゃあ伝わらないか。
「航、海斗を無理矢理にでも連れて行くぞ」
「ああ」
二人の面倒くさい声が聞こえてきた。糞、流石に三対一じゃあ分が悪い――
「止めとけよ」
悠馬、お前は……邪魔をしてこないのか。
「で、いつまで手を握っている気だ?」
優斗の声で、背後に向けていた意識を元に戻す。
「ちゃんとわかってんのか。俺は、兄貴を恋愛対象として好きなんだぞ!」
……言った。言えた。
何だろう。返事を聞くよりも何よりも、ずっと胸の中でくすぶっていたこの気持ちをやっと吐き出せたことに安堵する。
足から力が抜けそうだ。ああ、本当に、やっと。
言えた。伝えることが出来た。これでもうどうなっても構わない……わけがないだろ。
握り締めていた手を、優しい手つきで剥がされる。
「あ、ほ」
鼻で笑われた。
その細めた目は、どんな意味を持っているのだろう。
「弁当食え。俺は帰る」
と、言いながら踵を返してゆく。
ちょ、ちょっ、え!?
「返事は!?」
背中に叫ぶ。だいたい、応援しに来たんじゃあなかったのかよ。
振り向かぬまま、手を振ってくる。
「答えはノー以外ありえないだろ、阿呆」
しっかりとした声が、鼓膜に響いてきた。
え、何それ。ちょ、何だこれ。
俺は振られたのか? 振られ……た、のか。
去ってゆく後姿。胸がきゅぅぅと、締め付けられる。
眼球の奥が湿ってきて――嘘だろ。
いや、そんな簡単に付き合えるとは思っていなかったけれども。逆に、こんな簡単に振られるなんて思ってもみなかった。
少しは迷ったり、戸惑ったりする姿が見れるかと……でも現実は――
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