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第六章
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ああ、カーテンからこぼれ出している朝日が眩しいな。
ベッドから起き上がり、欠伸をしながら上半身を伸ばす。関節がごきりと音を立てて鳴った。
部屋の中が少々寒い。そりゃあそうか。もう秋だ。
告白をしてからも優斗は全く態度を変えてこなかった。それは、脈が無い事をよりわからせてきて、辛い。
しかし無視をされるよりかはましか。血が繋がっていて本当に良かったぜ。
まだ……完全には諦めがつかないけれど。叶わない未来を夢見ても、仕方が無いとは思う。
感情っていうのは本当に厄介だ。理性が全てを支配してしまえばいいのに。
そうであったならば電気信号のようにそれが身体の隅々まで送られて、いらないものに振り回されることはなく、とても真っ直ぐに生きていられるだろう。
が、まぁ仕方が無い。人間なのだから、そこは諦めなければならないところなんだ。
そう言い聞かせないとやっていけない。この、好きなのに、すぐ傍にいるのに心へ触れられない状態が苦しくて。
深くため息をつくと、部屋の静けさが増した。
それにしても優斗は一体何をしているんだ。
いつもの朝の戯れはどうした。
あの日より流石に、キスするぞ、なんてことは言わなくなったのだが……それでも、兄弟らしく、乱暴に起こしにきていたのに。
顔を顰めていると、部屋のドアが開いた。
「起きた、か?」
弱々しい声にさっと目を走らせる――何でそんなに顔が赤いんだ。
「悪いけれど今日は朝食を用意できなかったからな。俺は寝るから、後よろしく」
よろめきながら去ってゆこうとする後姿へ慌てて声をかけた。
「まさか、風邪引いたか!?」
「ご名答」
にやりと笑いながら振り向いているつもりだろうが、小首をかしげているようにしか見えないぞ可愛いな。
布団を蹴飛ばしベッドから飛び起きて、兄貴の傍へ走る。
「熱は?」
「39℃くらいかな」
おいおい。身体がぐらついているじゃあないか。
「高いだろ。薬は? 病院に行くか?」
「病院は昨日仕事帰りに寄ったから。その時に薬も貰ってある」
吐いている息までが熱そうだ。
背中に手を当て身体を支えてやる。
「俺が粥を作るから、それ食べて寝ろよ」
手を、振り払われた。
「別に大丈夫だからお前は学校に行け」
何でそんな事を言うんだ。
歯を食いしばりながら、優斗を睨みつける。
「大丈夫じゃあないだろ!」
ぎっ、と可愛い目で睨み返された。
「いいから! 行けよ。金を払っている俺が言うんだぞ。行け。時間を無駄に使うな!」
ふざけるな。
一瞬で頭に血が上った。
「嫌だ! 今日は休む!」
「海斗!」
「何もしないままでいてもしも、兄貴が死んだらどうすんだ!」
肩を掴んで揺さぶると、優斗の大きな瞳が更に見開かれた。
察しろ。わかれよ。
もう二度と、あんな経験をするのはご免だ。両親が事故にあって、病院の待合室でただぼんやりと、彼らが死ぬのを待っていたあの時。何も出来ない自分が歯がゆくてたまらなかった。
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