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「本当に大丈夫か? やっぱりもう一度病院に行ったほうが良くない?」
全く動く様子を見せない背中へと言いながら、布団をぼすりと掛けてやる。
「寒くないか? もう一枚いる?」
「いや、いらん」
こりゃあ喉もやられてるな。しわがれた声だ。
布団の中で、身体を丸めて背中を向けてくる。
「俺はお前の兄貴でよかったなと、こういう時には特に思うわ」
そうかよ。俺は、せめて兄貴じゃなかったらなぁと考えていたけれどな。
内心鼻息を荒くしながらベッドの脇へと腰を下ろし、背中をゆっくり撫でてやる。
血の繋がりさえなければ、きっと。強引にでもものにした……いや、無理か。こんなに華奢なのに、妙に力があるもんなぁ優斗は。
薬が効いてきたのだろうか。呼吸が深いものに変化している。
「優斗が兄貴じゃなくとも、俺は看病したぞ」
聞こえているのかわからないがとりあえず言っておくと、布団の中で足がごそつく音が聞こえてきた。
「それでも、兄弟ならば……どこにいても、どんな状態になっていても隣に感じられるだろう?」
今日は一体どうしたんだ。変に弱気な態度を見せてきているような気がする。
「それは恋人でも出来ることじゃあねぇかよ」
「子供、だったからな、お前」
「なんだそりゃ。意味がわからん」
未練たらったらの俺をからかってんのか。
「そろそろ寝かせてくれ」
「あ、悪い。じゃあ何かあったらすぐ呼べよ?」
布団の中に頭まで潜り込んだ優斗を確認し部屋を出ると、玄関のチャイムが鳴った。
宅配か何かかと思って出てみれば――お前、何しに来たんだよ。兄貴との二人きりの時間を邪魔すんな。
風になびいている筋盛の髪。少し吊り上がった二重の瞳が面白そうなものを見るような輝きを放っている。
「おお、様子を見に来てやったぞ」
おい。こんな時間に現れるとかさぁ。少々焦る。
「はぁ!? おい、お前、担任にちゃんと俺が休むことを伝えてくれたか?」
きっと悠馬が伝えてくれると思ってメールを送ったんだ。その期待を裏切られてしまっていては困る。
とりあえず玄関先に入れると、悠馬が眉を上げてきた。
「そこは抜かりなく。で、お前だけだと優斗さんがどうなるか心配だったからさ、俺も仮病を使って早退してきたわ」
元気な病人だな。よくもまぁ学校側が早退を許したもんだ。
「早退って、早すぎるだろ。一現目が始まったくらいの時間じゃあねぇか」
「早い方がいいだろ」
いや、むしろ遅い方が良かったぞ。優斗が寝てしまったらばその寝顔をこそりと眺めよう――なんて思っていたからな。
唸りたくなる気持ちを口の中へ隠していると、悠馬が目を細めてきた。
「で、優斗さんは? 大丈夫か?」
「ああ。薬を飲んで今寝てるわ。病院は昨日行ったらしいし……熱はまだ高いんだけどな」
「そうか。で、お前は大丈夫か?」
真面目な表情をして何言ってんだこいつ。
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