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序 野分立つ(のわきたつ)
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空が高く、時折吹く風が、夏とは違う匂いを運んでくる。
開け放たれた窓の外を、トンボがツイと横切っていった。
放課後の掃除はたるい。
可児は手抜きをしながら、季節が移り変わっていくのをぼんやりと感じ取っていた。
それでもまだ身体は汗ばみ、早よ家帰ってさっぱりしたいなぁ…と思っていた矢先、遊命が首からタオルを掛けて、バタバタと教室に飛び込んできた。
「あ、可児。丁度いいとこに」
「何や、どうしたん? びしょびしょやん。ってかあぁぁぁ、掃除してるとこに入ってくんなや」
可児は掃除を中断して、遊命のことをしっしっと追い払った。
「あいつらだよ、あいつら。二階から水かけてきやがった。可児、ロッカーにジャージが入ってるから取って」
「えぇ~?」
「何だよ、入るなつったじゃん」
「しゃあないなぁ」
可児はぶちぶち言いながら、遊命のロッカーを開けると、袋に入ったジャージを放り投げた。
いったい、どれ程の水をかけられたのか?
薄い制服のシャツが、素肌に張り付いて透けている。
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