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「遅かったね、鴨池(かもい)。はい、書類」
「…………どうも」
きっちり1時間後に再び現れた青年に、それを手渡す。そのまま踵を返して去って行くのかと思いきや書類に視線を落としたまま動かない相手に、牧は紫煙を揺らして問う。
「うん? 何か不備があった?」
「いえ。別件で少々考え事を」
「ふぅん、珍しいね。恋煩い?」
「……違います」
ふふ、と牧は微笑む。灰皿に煙草を押し潰してチラリと見やるのは、毛布にくるまって眠るカラメルブラウンの髪の青年。今は伏せられた、名前と同じ漆色の瞳が快楽で濡れる様を思い出して、牧は尚も笑った。
「恋は良いものだよ。きっと俺達が思っているよりも、ずっと」
「……」
鴨池が無言で書類から視線を上げる。
「それにね、漆間が言ったんだ。俺には綺麗なままでいて欲しいって。……笑っちゃうね、こんな異形な"化け物"を綺麗だなんて」
まさに恋は盲目だね、と口角を吊り上げて、牧は続ける。
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