アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
11
-
芳ばしいその薫り。
色違いのマグカップから昇る湯気の向こう、ゆるりとひとつ瞬く相手に、漆間は口を開いた。
「牧さん」
「ん?」
彼の唇がカップの縁から離れたタイミングを見計らって、その紅に自分のそれを、重ねる。
ブラックコーヒーと、煙草の苦味。
ふわりと刹那鼻を擽ったのは、多分、誰かの死の香り。
「……、……っ、え、なに、どうしたの、急に」
「……牧さんの」
「うん?」
「壊しかた、知らないから。教えてください」
……いつかこのひとが、『牧さん』で無くなる日に。
傍に居て、この手で。
「……んー……じゃあ手始めに、触ってみる?」
カップを置いた手に、ほら、と導かれたのは彼の胸元。シャツの間から覗く白い肌に、触れる。
「……教えてあげる。俺の、正しい壊しかた」
だからちゃんと覚えてね、と。
笑うそのひとは、何処までも、綺麗だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
11 / 19