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長谷部 秀一という男。
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「ぃよっ!!!調子はどうだ?」
そう言って目の前で煙草をふかしている男の背中を勢いよく叩いた。
「ってぇな、何すんだよ。」
「喫煙スペースなんかで黄昏ちゃってるから、景気づけてやろうとしたんだろ?」
「フンッ、ここに来てる時点で調子なんて悪いに決まってるだろ。」
眉間に皺を寄せ苦々しい表情のコイツは、同僚の日向 明日香(ヒナタ アスカ)。
因みに俺の幼馴染みでもある。
俺達は出版社で所謂編集をしているのだが、何の因果か、いくつかある中でも何故かまったく同じ部署で働くことに。
ホント、世界って狭いね。
もっと言ってしまえば小中高とクラスは全て一緒、大学は辛うじて別々だったものの、ここに来て再び巡り合いはや三年。
…この腐れ縁も何とかして頂きたいものだ。
「ごもっとも。原因は?」
「森沢だよ…アイツ覚えてろ……」
「ぉ、おぉ…闇のオーラが滲み出てる…
お前んとこは今が大事だからなー、まぁせいぜいケツ叩いてやんなよ。」
「言われなくても喜んでしばき倒してやるよ。」
「看板作家にすげぇなお前……やり過ぎるなよ…?」
「あのクソ作家にはやり過ぎ位が丁度いいんじゃないか。」
「おいおいw」
「…あ"ーあ。仕事すっかぁ…」
明日香はそう言うと、もう随分短くなった煙草の煙を最後に深く吸って、ふぅー…と長めに吐き出し
「お前もさっさと仕事しろよ。」
と出ていった。
「はいはい。」
喫煙スペースに独り残された俺は、ふと明日香が捨てていった吸い殻を見た。
ヤバイなこれ…アイツ何本吸ってたんだよ…
(疲れてんのかな…?)
明日香も大変だな~なんて思ったりして。
心配?そんなのしてやんねぇよ。
実際、おれも他人事ではないのだ。
俺が今担当している作家は、新人ながらにその独特な感性を生かし、こちらの思ってもみなかった作品を創り出してくれる、期待大の女性作家なのだが…
如何せん、自由奔放というか何というか、全然締め切りを守ろうとしない。
こちらもそれを見越して期限をつけているのに、更にそれを上回ってくるのだから俺としてはたまったもんじゃない。
(はぁ…。コーヒー飲も。)
俺は今後の課題について考えるのを放棄し、ひとつ溜め息を吐いて社内にある自販機へ向かった。
長谷部 秀一(ハセベ シュウイチ)25歳。
彼女無し。これといった取り柄も無し。
入社3年目にして人気作家(になる予定)を任されるものの、作家にナメられる。
……う~ん、不安だ。
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