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ひぃぃぃ。どうするよ、これ。
目の前に並んだ何本ものナイフとフォークが、俺に多大なるプレッシャーを与えてきていた。
か、帰りたい…。
こんな、何をどれから使っていいのかもわからないテーブルを前に、一体どうしろと。
真鍋は気にするなと言っていたが、そんなの無理だ。
「翼?緊張しているのか?」
テーブルの向かいには、目を細めて楽しげに笑う火宮がいる。
バッチリとダークスーツをきめ、悠然と構える様は、高級レストランでもわずかも見劣りしない。
様になり過ぎ!格好良すぎ。
ずるい、と思いながら窺った周囲は、これまたスーツの紳士たちに、ドレスアップした大人の女性たち。
どのテーブルの人間も、この場にしっかり馴染んでいる。
俺だけが、完全に場違いだ。
「緊張するに決まってます」
わかっていて、わざとこんな高級レストランに連れ出したんじゃなかろうか。
なんとなくだが、火宮はそういう意地悪なところがありそうな気がする。
「ククッ。気にせず好きに食べるといい」
「好きにって言われても…」
自慢じゃないが、フルコースなんて、これまでの人生1度も食べたことがない。
「別に使う順番を間違えようが、変な食べ方をしようが、死にはしないさ」
そう言いながら、洗練された仕草で優雅にナイフとフォークを手にする火宮に説得力はない。
「でも恥をかくし、かかせますよ?」
「俺と、俺の連れに意見出来る人間がこの場にいるとでも?」
なんだその俺様発言。
「でも」
「安心しろ。おまえが何をしようが誰も気にしないし、文句も言わせん」
そこまで自信たっぷりに言われたら、もう腹を括るしかない。
「本当に、変なことをしちゃっても知りませんから」
火宮は確か、1番外側の両端から取ったな。
一応、見よう見まねが通用する範囲は頑張るつもりで取ったナイフとフォークは、慣れない手にはとても扱い難かった。
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