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「うぁー。死んだー」
「クッ、縁起でもないことを言うな」
バタッとソファに突っ伏したまま、もう指先1つ動かすのも億劫だ。
ドロドロに溶けた身体が裸なのももう構うものか。
「縁起とか担ぐタイプー?」
「本当、おまえはな…。ヤクザは昔っからゲン担ぎはお得意だ」
「ふぅん」
「それよりほら、風呂は」
まぁ色々な液体で身体はドロドロだ。
「でも動きたくない…し、その、火宮さんは?」
そう。目隠しをされた俺は、ひたすら一方的に責められ、もう何度イかされたか知れないけれど。
だけど火宮は、挿れることはおろか、自分の快楽を求めることすらしなかった。
そのままでいいんだろうか。
「ククッ、呼び名が戻ったぞ?」
「え?あ、だってそれは…」
「ふっ、まぁ情事の時だけの特別というのもいいな」
それはそれでそそる、と笑う火宮は、意図的に話を逸らしたんだかどうなのか。
「って、そうじゃなくて。その、火宮さんはいいんですか?」
シなくて。と目で訴えたら、火宮はふわりと笑って首を振った。
「それだけくたばっていて言う台詞か。無理するな」
「っ、でも…」
「俺はいい。気にするな。それより翼、風呂まで運んでやろうか?」
もう、何でそんなに甘やかす。
「ゆっくり汗を流してこい。くれぐれものぼせるまで入るなよ」
ククッと笑いながら、軽々と抱き上げられてしまう。
「んっ…」
好き。
こんな風に甘い甘い火宮も。
「ククッ、鞭と飴かもしれないぞ?」
またそういう意地悪を言う。
だけど別にいいんだ。
「それでも。丸ごと大好き、どんと来いですよ」
「ククッ、本当おまえは、可愛いよ」
チュッなんて軽く触れる戯れのようなキスが嬉しい。
しっかり身体を抱えてくれる逞しい腕が心地いい。
「ねぇ、火宮さん…」
「なんだ」
幸せ過ぎて怖いとか、馬鹿らしいかな。
「っ、いえ。呼んだだけです」
「クッ、そうか。ほら、着いたぞ、立てるか?」
「はい、なんとか」
ヒヤリとしたタイルの床をしっかり踏みしめ、壁を支えにかろうじて立つ。
「フラフラだな。手伝うか?」
「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」
「ふっ。なんかあったら大声で呼べよ」
「はい」
スマートに浴室を立ち去っていく火宮を見送る。
「ふぁぁあ、もうなんか、やばいよね…」
ほわんとした幸せの呟きが、浴室の壁に反響した。
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