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冷え切って、ガタガタと震える身体を、熱くしたシャワーで温めてもらい、どうにか気持ちが落ち着いた俺は、風呂から上がってリビングのソファにいた。
向かいには、拭きっ放しで乱れた髪をした真鍋が、ノータイに新しく着替えたワイシャツ1枚という珍しい姿で座っている。
『怒ってますか?』
そっと取り上げたペンで、ノートに小さな文字で綴った俺は、チラリと真鍋を窺う。
まぁ眉間に皺を寄せたままの顔を見れば答えは明白だけど。
「えぇ、さすがに」
ですよねー。
浴室に飛び込んできたときの尋常じゃない怒鳴り声と、強烈に振り下ろされた平手の痛みは、はっきりと覚えている。
『お尻、痛いです。どうしてほっぺたじゃないんですか』
大抵、あぁいう場面は、ビンタっていうのが定番じゃないだろうか。それがなんで、お尻を全力で引っぱたかれたかな。
絶対真っ赤に手形がついていると思う。
「お怪我をなされている頬を叩くわけにはいきませんので」
あくまで冷静だった、ということなんだろうけど…。
『だからって、お尻?』
そっちも怪我…してるんだけどな。
「先生は、そちらは心配するほどのお傷はないとおっしゃっていました」
っ!
そっか、医者には診られてるんだ…。
『何を、どこまでご存知なんですか』
俺が語らない、俺の身に起きたこと。
「先生は、明らかな証拠となるような、精液や残留物は見受けられなかった、と」
っ…。
「頬の打撲、首の切り傷、後ろの小さな裂傷。ただそこから、性器の挿入がなかった、とは断言できかねると」
そうだよね。
残滓がなくても、傷が小さくても。
先輩たちが上手くやれば、証拠を残さないでヤることは可能だろうし。
『真鍋さん』
あなたのおかげで、俺、分かったことがあります。
『俺…犯られてません、最後までは』
全部。全部、話したいと思います。
「っ…翼さん」
ハッとしたように瞼を軽く上げた真鍋が、ゆっくりと不恰好な笑みを作った。
俺の意図するところに気づいたんだろう。
辛そうに微笑んで頷く真鍋が、「大丈夫、あなたは正しい」と、保証してくれているような気がして。
っ…。俺は。
汚させない。負けない。
だって俺には、凹んでも凹んでも、掬いあげてくれる心強い人たちがいる。
躓いたって転んだって、決して見捨てないで支えてくれる人たちがいる。
どんなに落ちたって…ちゃんと手を差し伸べてくれる人が…。
忘れていて、ごめんなさい。
俺には、守ってくれる人がいる。
守りたい人が、いる。
だから。
『俺は体育倉庫に連れ込まれて、そこで』
先輩たちにされたこと、受けた行為。
ぐっと握り締めたペン先を、迷わず動かして。
俺は、ページいっぱいになるその出来事を、包み隠さず書き連ねて、そっとノートを真鍋に手渡した。
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