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「ヒィィィッ…」
掠れた悲鳴が聞こえて、俺はストンとそこに視線を落とした。
鼻から、目から、口から、そして股間から、様々な液体を垂れ流した先輩が、焦点の合わない目を彷徨わせていた。
地面と垂直に突き立ったナイフは、先輩の喉元から横に数センチ。
首の皮1枚を微かに傷つけて、硬いアスファルトを削っていた。
支えを失ったナイフが、カラーンと倒れる。
っ…。
許せない。
だけどこれ以上もう何も、俺はあなたたちに奪わせない。
「翼…」
謝って…。
この、哀しく強く、優しい人を、あなたたちなんかに、闇に堕とさせはしない。
「翼さん…」
謝って下さい…。
あなたは最低な行為を目論んで、俺のことを傷つけた。
あなたたちはそれに共謀して、火宮にこんな虚しい刃をふるわせようとした。
謝って…。
だけどそれは、命で償う罪じゃない。
そんなことをしたら、火宮の方が汚れてしまう。
だから…。
ーー謝れっ。
ただ助けを乞うだけの、ひたすら赦しを求めるだけの前に。
ポタリ、ポタリと落ちた涙が、先輩のボコボコになって歪んだ顔の上に、いくつもいくつも流れていった。
あなたたちさえっ。あなたたちさえ、あんなことを企まなかったらっ…。
グッと掴み上げた先輩の胸ぐらを、ガクガクと前後に揺さぶる。
謝って…。
ボロボロと涙を流し、唇を震わせて泣く俺の耳に、微かな声が流れ込んできた。
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