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「あー、終わった、終わった。翼、今日は委員会ないんだろ?」
無事、1日の日課が終了したところで、豊峰がフラリと俺の席の側まで来た。
「このまま真っ直ぐ帰るのか?」
『うん、特に予定はないしね』
とりあえず、中間テストも近いことだし、適当に課題が出ている教科の教科書を鞄に詰めながら、俺はサラリとボールペンを走らせた。
「なぁ、もし暇だったら、寄り道してかねぇ?」
ファーストフードとか、と言う豊峰に、俺は少し考えた後、コクンと頷いた。
「っしゃ。じゃぁ迎えの連絡とか」
『うん、メールする』
早速電話帳に登録しておいた真鍋のアドレスを開き、豊峰と遊んで行く旨を連絡する。
そうして、ポチポチとメールを打っていたら、リカとユカと、もう1人の女子が近づいてきた。
「ねぇ、これから遊んで帰る感じ?私たちもいーれて」
にこっ、と、放課後仕様なのか、朝より格段にレベルアップしたばっちりメイクで、リカが笑った。
「あー?翼、どうする?」
『俺は別にいいけど』
遊ぶって言っても、街ブラしてファーストフードだけど、と豊峰が言うのに頷きながら、俺はリカを見る。
「やぁった。それじゃまぁ、よろしく」
行き先は任せる、とピースしながら、嬉しそうにリカが笑う。
『うん。じゃぁ行こうか』
真鍋にメールを送り終わった俺は立ち上がり、なんだかちょっとした集団になったグループで、放課後の街へ繰り出した。
✳︎
「あっ、ねぇねぇ、記念にさ、プリクラ撮らない?」
たまたま通りかかったお店で、たまたま目についたらしい機械を指差して、リカが提案した。
「はぁ?このメンツで?」
やだよ。とつれない豊峰に、リカの目が吊り上がる。
「ノリ悪いなぁ。翼くんは、撮ってくれるよね?」
豊峰が駄目なら俺の攻略か。
曖昧に苦笑しながら、俺はどうしようかと豊峰を見る。
「はっ、翼が頷くわけねぇじゃん。だって女子と映ったプリクラなんて、あのお方に見られてみろ?」
あー、それはなんだか怖いことになりそうだな。
豊峰も、1度しか会っていないのに、よく分かるな。
「あのお方?」
「カ、レ、シ」
悪戯っぽく笑う豊峰に、俺は思わず顔を引攣らせてしまう。
けれどもリカは、あっけらかんと笑って、なるほどと頷いた。
「そういえば、なんだかかんだかの会長のパートナーとかなんとか」
ケロッと言うリカは、その辺りに偏見はないのか。
「そうそう。これまた、すっげぇ美形の男だぜ」
幹部様にも負けない、と悪戯っぽく笑う豊峰に、リカの目がまん丸になる。
「え!あの麗しき幹部様以上?」
「ヤクザの頭だけど」
「それでも一目見てみたいー!」
キャァキャァとはしゃぐリカは、豊峰とも自然に接していて、俺が男と付き合っているというのも普通に流している。
変わっていく。
編入当初の、あのどうしようもなく違和感しかなかった空気が。
変わっていく。
豊峰も、そして周囲も。
それは決して悪い変化ではないだろう。
そう思う心が、ほわんと温まる。
「じゃぁ1枚だけだぞ」
「まぁそう言わず」
「翼。おーい、翼」
え…?
いつの間にか、プリクラを撮る流れになっていたらしい。
機械の前から、コイコイと手招きする豊峰たちの方に近づきながら、俺はぼんやりと火宮のことを思い浮かべた。
あー、これ、やっぱ妬くよね…。
ほぼ確信的に想像がつきながらも、俺は結局、このメンバーとプリクラを撮った。
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