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そうして、うちのクラスだけ円陣を組むという気合いの入りようで、行われた全員リレー。
リカの発破のおかげかなんなのか。
結果はなんとダントツでぶっちぎりの1位。
大いに盛り上がっているクラスメイトの輪の中に、俺も、豊峰も、いつの間にか紫藤も、いる。
「っ…」
4月の当初じゃ、想像もつかなかった光景だ。
クラスみんなが団結して、豊峰や俺を弾くことなくバトンもちゃんと繋いでくれて。
一緒になって喜んで、遠慮なく揉みくちゃにしてくれる。
「リレー優勝、やったー!この勢いで、総合優勝も取りに行くよー!」
リカの掛け声に、「おー!」なんて盛り上がっているクラスメイトを横目に、なんだかシミジミと、この喜びを噛み締めてしまう。
「翼」
「あ、藍くん」
「やったな」
にかっ、と笑う豊峰の、その目が緩やかに細められて。
「おまえが変えた。おまえが作った今だ」
ふざけた笑いじゃない。ふわりと柔らかく微笑む豊峰の目は、眩しそうにみんなを見ている。
「こんな光景が見られる日が来るなんて思わなかった。こんな世界に入れる日が来るなんて考えられなかった」
「藍くん…」
「翼、ありがとう」
くしゃりと髪を撫でて、トンッと背中を押された俺は、ワイワイ盛り上がっているクラスメイトたちの輪の中に、フラフラと入ってしまう。
「つー!イッエーイ!」
「タクト!」
パァン、と合わされるハイタッチ。
「翼、1人抜いたよな!お手柄ー」
「えへへ、なんとかね」
クシャクシャと、髪を掻き混ぜられて肩を組まれて。
「つーちゃん!やったね!優勝だよ、優勝!」
わーい、とはしゃぎながら、ハグしてくるリカにはドキッとなる。
楽しい。幸せ。とても嬉しいけど…。
これはさすがに、とこっそり窺った、観覧者席の恋人様は。
目を細めて、少しだけ柔らかい空気をして、静かにこちらを眺めていた。
「っ!」
もう…。
ずるいよね。
こんなときにはちゃんと、嫉妬も独占欲も綺麗に隠して、よかったな、なんて、俺の世界を認めてくれちゃうんだから。
っ…。
じわりと滲んだ視界のわけなんて知らない。
「およ?つー、なに?嬉しすぎて泣いてんの?」
「ぶっはー、感激しすぎだから!まだまだ競技はこれからだよー?」
「次は綱引き!これも勝ちに行くかんね!」
うん、うん。
そうだよ。それそれ。
リレー優勝嬉しすぎて。
みんなと一緒にはしゃげて幸せすぎて。
だけど本当のわけは、誰より1番分かってる。
あなたが愛しい。
あなたのことを泣けるほど愛してる。
『だ、い、す、き』
読話が出来ると言った火宮に向けて。
みんなに揉みくちゃにされた輪の中から。にっこり笑って唇を動かした俺に、火宮が「あぁ」と呟いたのが分かった。
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