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「それで?翼。さっきおまえ、真鍋になにをアイコンタクトしていた」
「ひっ、そ、それは…」
「浜崎を、庇わせたな?」
スゥッと目を細めてこちらを見てくる火宮は、怒っている様子ではないけれど。
「まったく。あいつのせいで、怖い思いをしただろうに」
「それは…」
「クッ、お優しいことだな。だが翼、あまり俺以外に優しくするなよ?」
ニヤリ、と意地悪く唇の端を吊り上げた火宮に、顎をぐいと捕らえられる。
「っ…」
「妬くからな」
誰が、なんていうのは、聞かなくても分かり切っていて。
噛み付くように与えられた口付けで、吐息が奪われる。
「んっ、あ…んンッ」
クチュッ、と吸い出された舌が捕まって、ねっとりと濃厚に、火宮のそれが絡みつく。
「んぁ、あぁ…」
飲み込み切れない唾液が顎に伝い、頭の芯がジーンと痺れた。
「ふぁっ、あ」
「ククッ、相変わらず感じやすい」
クタリと火宮の肩に寄りかかってしまった身体を笑われる。
「だって…」
好きな人に、キスされてるんだもん。
そんなの、気持ちいいに決まってる。
しかも火宮はめちゃくちゃ上手いし。
「クッ、その目。誘っているのか?」
「っ、バカ…」
まったく。
ズボンの前に伸びてきた悪戯な手をパシッと掴んだら、火宮がクックッと喉を鳴らして笑った。
「なんだ。お触り禁止か」
「おさわっ…って何言ってるんですかっ」
この人、どっかネジ飛んだ?
「昼間はあんなに可愛く乱れていたのに」
「なっ、あれはっ、火宮さんがっ…」
罰とかお仕置きとか、あんな保健室で。
「クックックッ、本当、おまえは好き者だな」
「っーー!どっちが!」
好き者なのはあなたでしょうが。
このどS。
「ククッ、ほら」
「はい?」
「その目。今度は仕置きの催促か」
「っーー!」
このバカ。どS。意地悪火宮。
思いつくまま内心で悪口を言いまくって、スルリと素早く火宮の腕から抜け出す。
「クックックッ、その怒りながら怯えた顔。本当、おまえは飽きさせない」
器用なものだ、って、俺は別に!
あなたを楽しませたくてやっているんじゃない。
「ほら、そう警戒するな。来い」
「そう言って油断させて、襲うとか」
「されたいということか?」
「やですよ!」
昼間、空イキも含めて、一体何度イかされたと思ってる。
「クッ、つれないな。まぁいい」
ほら、と結局、火宮の足の間に捕らえられてしまった身体をちょこんとソファに座らせる。
「それより、本城か」
「あの人…」
「まさかおまえが金に釣られるタマとは思わないが。もしまた接触を図ってくるようなら、速攻で逃げろよ」
「はい」
のしっ、と頭に乗ったのは、後ろにいる火宮の顎か。
「他にも、知らない人間が近づいて来たら、とりあえず逃げろ」
「あはは、分かりました」
グリグリと頭を擦る火宮の顔から、低音の心地いい声が響く。
「後は近づいて来るとしたら組対のやつらか。今度真鍋に言って顔写真を持って来させる」
「組対って、警察…」
思わず振り返ってしまったら、ぶつかるかというほど間近に火宮の顔があった。
「わっ、びっくりした」
「こっちの台詞だ。頭突きされるかと思った」
前見てろ、と、グイッと頭を戻される。
「んもう、甘えてます?」
「ククッ、そう感じるか?」
戻した頭の上に、またも火宮の顎が乗り、しかもぎゅっと後ろから抱き締められた。
「んー」
「ふっ、この温もりが、愛おしくてたまらない」
「っ…」
いきなり何を。
「必ず守る。守るから、だから…。いいか、翼、組対のやつらもな、もし見かけたら、速攻で逃げろ。おまえは何を言われても対応してやる必要はない」
「はい…」
コクンと頷く頭を、ヨシヨシと撫でられる。
「だけど翼…おまえはそれで、俺の側にいることが、嫌にはならないか?」
まるで悪人にでもなったみたいだろう?と笑う火宮は、本当は答えなんて分かり切っているくせに。
「まったく。なるわけないでしょう?あなたは俺の覚悟を見くびっているんですか?」
怒りますよ?
ふふ、と笑ってしまいながら、コツン、と指輪同士を触れさせた俺に、火宮から妖しい色香が立ち上った。
「おまえは、本当に」
チュッ、と髪に触れたのは、火宮の優しい口付けで。
「だから、たまらない。愛している」
ふわりと優しく俺を包み込む声色に、へにゃりと緩む顔を止められなかった。
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