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「え?」
窓ガラスから手を離して、肩に掛けられた布地に触れる。
夜景が煌めく窓ガラスの中でも、一際色鮮やかに目立つそれは、花柄が美しい、真っ赤な打掛だった。
「っ、火宮さん、これ…」
どう見ても女性物。なのにサイズは俺ピッタリだ。
「ククッ、色っぽいな」
「あの…」
「オヤジからの贈り物だ」
「は?」
七重さんの?
「披露目式をやると言ったら、火宮の姐さんじゃぁ、目一杯着飾っておめかしさせないとな、と贈って寄越した」
「はぁっ?」
いや俺、男。姐って、着物って…。
「ククッ、だがおまえが人前で、女物の着物など着るわけがないな」
「そりゃ…」
「俺もオヤジにそう伝えたし、俺は男のおまえに惚れて、男のおまえを選んだんだ。女の代わりでも、俺のオンナとしておまえを皆に紹介したかったわけでもない」
「火宮さん…」
「だから断ったが、オヤジが1度出したものを、引っ込めるわけもなく。ならプライベートで遊びにでも使え、と」
ニヤリ、と笑って、俺の肩に手を掛けてきた火宮が、そっと顔を寄せてきた。
「ククッ、よく似合う」
「なっ…」
この人、馬鹿なの?
いくら遊びに使えと言われても、こんな明らかに高級そうな着物。本気でこんなことに使う?
「欲情して濡れた瞳と、全裸に打掛1枚。艶やかで、妖しくて、どんな女より、どれほどの夜景より、おまえが1番美しい」
「っ…」
「惚れた欲目を抜きにしても、これは」
見ろ、と顎を捕らえてきた火宮の手が、クイッと俺をガラス越しに見つめさせ、クチュッと口の中に、その指を差し込んできた。
「んっ、あっ…」
「よく見ろ、翼。たまらない色香を放つ、これがおまえだ」
「やっ、あっ…」
「俺のものだ。俺だけの」
ギラリ、と火宮の目の奥に揺れたのは、全力の独占欲と野獣のような欲望で。
「どうした?もう我慢ができないか?」
「んっ、あぁっ」
分かっているくせに。
グチュグチュと口の中を掻き回され、舌を捕らえられて無理矢理舐めさせられれば、媚薬の入った身体に広がるのは、もどかしい快感で。
「あっちもこっちも涎を垂らして」
「やっ…」
飲み込みきれない唾液と、中心から溢れる先走りを笑われる。
「ふっ、ぅっ、あぁっ」
ガクガクと震えてきた足を必死で踏ん張り、けれど支えきれない上半身を、後ろの火宮に凭れさせる。
「あっ、だめ、火宮さっ、もっ…」
後ろに入っているプラグをきゅん、と締めてしまい、ゾクゾクと湧いた快感に、限界を感じた。
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