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「あっ、はっ、火宮さっ、もう…」
結局あれから何度イったのか。
すでにドロドロに汚れた腹の上には、白濁が溜まっていて。
散々穿たれた後ろの感覚はすでになく、前はかろうじて勃ち上がってはいるものの、多分もう出るものがない。
「クッ、限界か?まだ意識があるだろう」
「は、ぁ、ぁっ…」
だからっ、一体どこまでやる気か。
すでに掠れ始めた声に、意識も朦朧とし始めている。
「まだまだ」
「ふ、ぁ、この、ぜ…」
絶倫、と紡いだはずの声は、掠れて音にはならなかった。
「ふっ、ほら、まだ搾れるぞ」
「あぁぁ…」
俺が何度もイく間、自分はまだ1度しかイッていない火宮の頭がおかしい。
ここへきて、まだわざと前立腺を擦ってくるその意地の悪さに、目眩すらしてくる。
「ほら、翼」
「っ、あ、あぁっ、あぁぁぁっ!」
だから、もう、出ないって言ってるのに。
ゆさっ、と突き上げられて、ピュッと飛んだのは、ほとんど粘り気のない透明な液体で。
「も、ほんと、げんかい…」
激しく求められるのは、嬉しくないわけじゃない。
だけどものには限度ってものがあると思う。
ふらぁっ、と傾いだ頭に、意識がようやく薄れていく。
「クッ、翼」
「も、しんじゃうから…」
そりゃ、死ぬほど愛してるとか、言葉では言うけどさ。
「ほ、んと、に、腹上死とか、笑えない…バ、ひみ、ゃ…」
本当に本気で掠れるまで泣かされてしまった声で、最後の最後に暴言を。
「ククッ、だから、おまえだ」
ふわりと、愉悦に揺れた火宮の、甘い甘ーい声が聞こえたと思ったら、ドクッとナカで火宮が弾けて、ぎゅ、と俺の上に心地よい重みが乗った。
「愛している、翼」
その記憶を最後に、俺の意識はプッツリと途絶えた。
*
「けほっ、んっ、朝か…」
不意にむせて、目が覚めた。
「ぼんどにかすれてる…ガラガラだ」
あー、と出す声に、しっかりと濁点がついてしまっていることが苦笑ものだ。
「本当、絶倫火宮…って、うわ」
新たな暴言を生み出しつつ、どうにか身体を起こした俺は、パサリと落ちた上掛けの中から現れた自分の身体を見て、ヒクッと頬を引きつらせた。
「どんだけ付けてるんだ、これ…」
皮下出血って、立派な怪我なんだからね。
なんて、皮肉な嫌味を浮かべてしまう。
これはもう、満身創痍って言っていいレベルだ。
「あはは。なんてねー。嬉しいんだもんなぁ」
ここにも、こっちにも。
わ、こんなところにも。
数え切れないほどあちこちに散らされた火宮のキスマークを、1つ1つ指で押さえなぞってしまう。
「ふふ」
あの火宮が。俺に夢中で、俺に大人気なく全力でぶつかってきてくれるのが、馬鹿みたいに嬉しい。
「でも、さすがに腰がオワってる…」
重い、怠い、痛いの三拍子揃った状態に、どうしたものかと考える。
「学校だよね…。行ける気がしない」
それどころか、今、このベッドの上からリビングに行くことさえ怪しいんじゃないだろうか。
「うぅっ、欠席の連絡、してくれてあるのかな」
火宮のことだ。抜かりなく真鍋に言ってくれてあるとは思うけれど、一応確認しないと恐ろしいことになる。
俺はどうにか這ってリビングまでたどり着いた。
『えっ?翼、休みなんですか?』
『あぁ』
『ちぇ。昨日は元気そうだったのにな』
ん?
藍くん?と、火宮さん?
ふと、リビングに出たところで、玄関の方から、2人の話し声が聞こえてきた。
『ふっ、例の後遺症ではない、心配するな』
『そうですか』
『ククッ、まぁある意味、後遺症で体調不良だがな』
っ!
あのバカ火宮!
藍くんに何を言ってくれているんだ。
俺が寝ていると思って好き勝手なことを。
むっ、となりながら、リビングのドアのこちら側で悪態をついてやった俺の耳に、ふと穏やかなトーンの火宮の声が聞こえた。
『あいつの友人によろしく言っておけ』
『えっ、あっ、はい』
『長らく休んで心配をかけたが、明日からは行けるはずだ』
っ…。
もう、だから、ずるい。
どんなに意地悪していたって、結局そうやって俺のために動いてくれてて。
きっと学校には、全部綺麗にフォローが入っているんだろうな、って分かるから。
『はい』
『じゃぁ俺は出る』
『はっ、あ、いってらっしゃいませ。って、俺も下までご一緒…』
なんだか豊峰らしくない、カチコチの丁寧語が遠ざかっていく。
「ふふふ、本当、ずるい」
全部をスマートにこなして、シラッとしている人。
愛されてる。
それを照れ臭いほどに実感して、俺は両手で顔を覆いながら、ズルズルとリビングの床に滑り落ちていった。
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