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「俺、か…」
「そうですね。翼さんが、豊峰の若の味方だから」
「本当、火宮さんは、なんで分かるんだろう」
俺の望みも、俺が欲しい未来も、俺ですらどうすればいいか分からないような希望まで、先回りして。
「ふっ、それは会長が、何よりあなたを重んじているからでしょう」
「重んじる?」
「簡単に言えば、愛、ということです」
「っ…」
サラリと単調な声で言われた単語だけれど、その一言はあまりにも破壊力があり過ぎた。
「翼?」
「翼さん?」
ゴツン、とテーブルにおでこをぶつける勢いで突っ伏した俺に、2人の心配そうな声が掛かる。
「な、なんでもない。なんか照れただけだから」
顔を隠したところで、多分俺は耳まで真っ赤だろう。
カッカと火照る頬が教えてくれる。
「なんだ今更」
「本当、今更ですね」
あぁもう、分かっているけど、恥ずかしいものは恥ずかしいんだよ。
デリカシーってものがないこの2人に、内心で悪態をつきながら、俺はぎゅぅ、と目を瞑った。
「まぁいいでしょう。翼さんは指示範囲までやり終えているようですので、豊峰の若。おまえはまず、この基礎強化の問題の方を解いてみろ」
問題集をお借りします、と許可を取ってくる真鍋に、コクコクと頭を伏せたまま頷く。
「へぇーい。ちぇっ、翼はこんなんでも頭いいんだもんな」
ブツブツぼやく豊峰の声が聞こえた。
「ちょっと藍くん。こんなんでも、って失礼じゃない」
「だってこんな色ボケしているくせに、学年トップクラスってさー」
「ちょっ、色ボケって!何言って…」
思わずガバッと頭を起こして、ムーッと豊峰を睨んだら…。
「お2人とも、手を出しなさい」
「っ…」
「ッ!」
怖ぁい怖ぁい真鍋様が、冷たいオーラを立ち上らせて、ピシリと指示棒を手のひらに打ち付けていた。
「早く」
コツ、とテーブルを示されて、ビクッと肩が震えてしまう。
「無駄口を叩いている暇があったら、さっさと指示した問題を解け」
「はひっ」
「翼さんは、若の無駄口に乗っかって邪魔をなさらないでください」
「は、はい」
「1打ずつだ」
っ…。
とても逆らうことのできないオーラを醸し出す真鍋に、恐る恐る手のひらを差し出せば、ピシッと指示棒の痛みが、横一線に走り抜けた。
「くぅっ…」
本当、厳しい。容赦がない。鬼真鍋。
ぶたれた手のひらをぎゅっ、と握って苦痛に耐える。
「っぎゃあ!」
隣で豊峰も、潰れた悲鳴を上げていた。
それからも、文字通りビシバシしごかれながら、今日の家庭教師は終わり、真鍋がいくつかの課題を出して帰って行った。
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