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「ふふ、そうと決まったら、ほら、お昼にしよう?」
伸びちゃう、と笑う紫藤が、ペリペリとカップ麺の蓋を開ける。
「あ、うん。そうだね」
今日も今日とて、朝、送りの際に渡されたなんちゃらという、有名人気店の仕出し弁当を広げ始めながら、俺はやっぱり隣の豊峰の浜崎弁当が羨ましくて眺めてしまう。
「物欲しそうに見てもやんねぇぞ」
「う。別に取るつもりじゃないけど」
「おんなじの、どっかで浜崎さんも食ってんじゃねぇ?」
そんなに欲しけりゃ、そっちから奪い取れ、って…。
「あっ、そうか。用務員」
それで、弁当持参で、ついでに豊峰の分も作ったというわけなのか。
「っ!なら、後1個増えるくらいいいのにー!」
くそぉ、火宮め。
どうしようもない嫉妬発動で、またこんな無駄遣いするんだもんな。
「ぷふ、相変わらず溺愛されてることで」
「んもう、すぐそうやってからかって。本当に真鍋さんに言いつけるぞー」
「げ。それは勘弁」
激しく顔を歪める豊峰は、本当によっぽど昨日の家庭教師が懲り懲りらしい。
「藍たち、今日も家庭教師?」
「うん。俺、休んでいた分、全然補充が足りてないからね」
授業内容は分かったけれど、期末テスト対策を考えるとまだ足りない。
「翼がやるなら必然的に俺も連れて行かれる…」
「そっか」
ズーッと麺を啜りながら、紫藤がチラリと俺を見た。
「な、なに」
「ううん。ただ、医学部じゃぁ、上位を狙うわけだよな、と思ってね」
「まぁね…。期末こそは、1位、もらうから」
また真鍋たちに文句をつけられるのはごめんだし。
「ふふ、テストに関してはライバルだね」
「そうだねー」
すごく手強いライバルだ。
「くそぉ、俺もおまえらのその会話に、いつか参戦してやるからな」
「クスクス、とりあえず、今回の目標は?」
「今回?そうだなぁ、全教科、平均点は取る…とか?」
「ぬるいなー」
クスクスと笑う紫藤の目が、スゥッと意地悪く細められる。
「ッ。万年圏外の俺にしちゃ、頑張る方…」
「甘い。学年30位以内。これでどう?」
にこりと笑う紫藤のその感じ。なんだか笑顔なのにやたらと威圧感があるな。
「はぁっ?30位?冗談。学年50位にも入ったことがない俺が」
「でもそれくらいしなきゃ、あのお父さんを説得なんてできやしないよ?」
「う…。それはそうだけど」
紫藤の言葉にタジタジになりながら、豊峰が美味しそうな卵焼きに箸を突き刺している。
「ふふ、大丈夫だよ。真鍋さんについていけば、きっと目標まで学力引き上げてくれるよ」
「やり手なんだね」
「その分、死ぬほどスパルタだけどな」
げっそりとしながら、卵焼きをパクンと口にした豊峰の顔が輝く。
「んまっ」
「いいなー」
「じゃぁさ、ついでに、賭けない?」
クスッと笑って、紫藤が1人、突然の提案をしてきた。
「賭け?」
「うん。そう。目標を達成できなかったらペナルティ」
「なんだよそれ」
にこりと笑う紫藤が黒い。
けれども豊峰は弁当に夢中で、その妖しい表情に気づいていないみたいだ。
「藍は学年30位以内。出来なかったらオシオキ」
「はぁ?何言って…」
「僕と火宮くんは1位?」
「え、ちょっと待って、それじゃぁ必ずどちらか1人はペナルティを受けることになっちゃうじゃない」
同点1位の確率はすごく低いだろう。
「ま、お互い満点なら問題ないけど」
「はぁっ?取る気?」
この腹黒優等生、豊峰じゃないけれど、本当、何を考えているのかわからないな。
「へぇ?おまえら1位争い?いいね。それなら俺もやってもいいぜ」
ニヤッ、なんて、ノッてきた豊峰も何を考えているのか。
「翼。1位取って、和泉負かせ」
ニヤニヤと楽しげな視線を紫藤に向ける豊峰は、とんでもない賭けの内容に気づいているのだろうか。
「ふふ、いいんだね?藍」
「30位だろ?取ってやろうじゃねぇの」
なんなのこの2人。
互いにやけに挑戦的で、互いにやたら勝つ気満々なんだけど。
「ちょっ、俺は…」
「1人だけ逃げようったって、そうはいかねぇからな、翼」
「ふふ、勝てる自信がないの?」
っ…。なんなの、この2人。
「ふん、やればいいんでしょ、やれば」
あぁ、負けず嫌いの俺の性格。
ちゃちな挑発で、なんでこんな賭けに頷いた。
口にしてから、しまった、と思っても、もう後の祭り。
にこり、にやり、と笑った2人が「健闘を」なんて祈り合っている中に、俺まで参戦する羽目になっていた。
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