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「っ、翼、大丈夫かっ?とにかく下がれ。上に…」
バタバタと、2人の構成員に駆け寄る構成員たちを見ながら、呆然となってしまっていた俺を、豊峰がそっと引っ張ってくれた。
「っ…藍くん、あれ…け、怪我を…」
「あぁ。大丈夫だ。あっちはみんなとか幹部がなんとかするだろ。それよりおまえ、真っ青だぞ。早く会長さんのトコに行って…」
言いながら、ズルズルとエレベーターホールまで俺を連れて行ってくれた豊峰が、ボタンに手を伸ばしたそのとき。
ポーンと音を立てて、エレベーターがちょうど1階に到着した。
「っ?!」
「え?翼さん?」
スゥッと開いたエレベーターの扉の中から現れたのは、ピクリと一瞬目を瞠った真鍋で。
「池田。上にお連れしろ」
護衛よろしく、真鍋の横に油断なく佇んでいた池田に声だけ放ち、真鍋はさっさとエントランスホールに出て行った。
「あ…俺」
「どうぞ、翼さん。お乗り下さい。まだ状況把握が出来ておりません。この場からとにかくお離れになられて下さい」
「っ…」
「どうぞ。会長の元へお連れ致します」
豊峰も乗れ、と続いた声に、俺は豊峰に押されてエレベーターの中へと乗り込まされる。
「っ、なに?なんなの?血が…血がいっぱい…」
完全に動揺しきった俺は、スッと閉まった扉のこちら側で、ぎゅぅと頭を抱えた。
「あれはなに?ど、して…?一体な、にが、起きて…」
訳の分からない状況と、理由もわからず押し寄せる不安に、ブルリと身体が震える。
「こ、わい…」
ヒシヒシと迫る非日常の足音に、ぎゅぅと息がし辛くなった。
「着きました。安全です。どうぞお降り下さい」
ポーンと音を立てて開いた扉から、まず池田が油断なくフロアに降り立ち、俺を促してくれる。
「ほら、翼」
そっと豊峰にも背中を押され、俺はギクシャクとエレベーターを降りた。
「会長、池田です。失礼致します」
コンコンと、静かなフロアにノックの音が響く。
ガチャッとやけに大きく聞こえたドアの開く音に、ビクッと肩が跳ねた。
「あぁ池田、今真鍋が…ん?翼?」
執務机の向こうで、内線電話の受話器を持っていた火宮が、俺を見止めて目を細めた。
「どうした?なんでいるんだ」
「っ…ひ、みや、さん…」
「なるほど。下で騒ぎを見たか。来い」
スッと椅子から立ち上がり、両腕を広げた火宮の元へ、震える足を踏み出す。
「っ…」
トサッとその胸に飛び込んだら、宥めるように優しく抱き締められた。
「驚いたな。大丈夫だ」
「っん…。俺、今日、勉強で分からないところがあったから、真鍋さんに教えてもらおうと思って…」
「それでここへ来ていたのか。タイミングが悪かったな」
ふわり、ふわりと頭に触れる火宮の手が優しい。
「とりあえず、豊峰。翼に何か温かい飲み物を入れてやれ」
「っ、は、はいっ。あの、えっと…」
「秘書室の奥に簡易キッチンがある」
「はいっ」
ペコッと一礼して出て行く豊峰を見送り、ソファに促される。
「それから、池田」
「はい」
スッと黙ってソファの横に控えた池田の顔が、ピリッと緊張した。
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