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カチャン…。
それから、どれくらい静かな時間が過ぎたのか。
不意に入り口のドアが開く音がして、俺はぼんやりとそちらに視線を向けた。
「っ、霧生…さん」
「ふふ、酷い顔。たくさん悩んだみたいだね?それで?答えは出せた?」
クスクスと笑う霧生が、悠然とした笑顔のまま、ベッドの側まで近づいてきた。
「っ…」
「ふふ、まぁ、まずは食事にしようか」
「えっ?」
クスッと笑った霧生が差し出してきたのは、トレイに乗ったパンとスープと小さく切られたステーキで。
「っ、い、りません…」
どうせ薬入りかなにかなんだろう?
誘拐犯に出された食事など、俺が無防備にホイホイと口にすると思うのか。
「クスクス、それくらいの警戒心はあるんだ?でも安心して。別に何も混入させてないよ。まぁ、ナイフやフォークはさすがに持たせる気はないから、手掴みで食べてもらうことになるけど」
「信用できるか」
何も企んでないと言われたところで、手をつける気はない。
「でもほら、おれも別にきみを飢えさせるつもりはないしね」
食べてよ、と押し出される食事から、ふわりといい匂いが漂う。
「っ!」
「クスクス、ほら」
なんてタイミングだ。
派手にぐぅーっ、と鳴ってしまったお腹に、カァッと頬が熱くなった。
「いらないって言ってるっ!」
羞恥と苛立ちから、思わず振り払った両手が、ガシャンと霧生の持つトレイに当たってしまった。
勢いのまま飛んで行った食事が、床にぶちまけられる。
ソースが跳ねたのか、霧生のワイシャツにも小さな染みが飛んでいた。
「あ…ごめ」
ここまでするつもりは…。
汚してしまった床を呆然と見つめて、唇が震えた。
「ふぅん」
スゥッと目を細めた霧生から、壮絶に妖しいオーラが立ち上った。
「っ…」
ぞくり、と身が震えたのは、なにも寒さからではない。
火宮が意地悪をするときによく似た、けれどそれよりずっと残虐なオーラを纏った霧生に、俺は知らず知らずのうちにズリズリとベッドの上を後退していた。
「ふふ、わるい子」
「っぁ…」
「おれに逆らったり反抗したりしたらどうするか、言ったよね?」
にこり、と笑った霧生が、笑顔のまま、スッと後ろに足を引いた。
「これは、お仕置きが必要だね」
「っ…」
「鞭がいいかな。クスクス、それとも、普段から火宮会長にも可愛がってもらっているんだろうから、後ろを使って反省しようか」
笑いながら、数歩後ずさった霧生が、たどり着いたドアをコンコンとノックした。
「いるな?入ってこい」
「はっ、お呼びでしょうか、会長」
すぐにドアのすぐ外から、2人のスーツ姿の男の人が入ってきた。
「すぐに片づけを。それから、鞭と例の箱を持って来い」
凜とした霧生の声に、男たちが床に散らばった食事を見て顔をしかめる。
その後チラリと俺にくれた視線が、冷ややかな非難の色をしていた。
「かしこまりました」
それでも黙って頭を下げた2人の男が、そのまま静かに素早く行動に移っていった。
「っー—!お、れ…」
決して料理を滅茶苦茶にするつもりはなかったんだ。
床で、無駄になった料理を黙々と片づけていく男を見て、小さく唇が震える。
「ふふ、別に今は謝罪なんかいらないよ。これからお尻をいーっぱい叩かれて、真っ赤にされて泣いちゃいながら、たっぷり謝ることになるんだから」
「っ、そんな。い、やだ…」
フルフルと首を振っても、霧生の笑顔は変わらない。
鞭と小箱を持って戻ってきたもう1人の男が、俺の手錠の鎖をグイと引いた。
「嫌だっ…」
自由な片足でガンガン男を蹴りつけ、どうにか逃げ出そうと俺は必死で抵抗する。
「うーん、本当、わるい子。あんまり聞き分けと往生際が悪い子は…うんとつらい目に遭わせちゃうよ?」
クスクスと笑う霧生の声が、ねっとりと全身に絡みつき、それがあまりに嗜虐的な悦びに満ちているように感じて、俺はゾッとして思わず動きを止めてしまった。
この人…。火宮さんの比じゃない。
冷酷非情なサディストのオーラを感じ、心底身体が冷える。
「ふふ、いい子。大人しくなった」
にこり、と笑った霧生にハッとしたときにはもう、俺の両手をつないだ手錠の鎖が、また別の手錠の鎖に通されて、ベッドヘッドに繋がれていた。
「っ…」
「ご苦労。おまえたちはもういい。出ていろ」
「「はっ」」
床を掃除していた男と、俺をベッドに繋いだ男が、霧生の声で退室していく。
「っ、や…」
ベッド上で両膝をつき、四つん這いに近い格好で拘束された俺の後ろに、ふと、霧生が近づく気配がした。
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