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それから、昼食を無事に済ませた俺たちは、それぞれ会社とマンションへと別れて行った。
夜。
「はーぁ、なんか疲れたな」
冷蔵庫から取り出したペットボトルの水を呷って、俺はズルズルとソファに身体を沈めた。
「まったく、お仕置きだとかって、いつもやり過ぎなんだよー」
昼間の本家訪問でもなんとなく気疲れしていたというのに。
帰宅した火宮に昼間の仕置きだと、散々に責められ泣かされ、俺はもうすっかりクタクタだ。
「はぁ、でも後少しで夏休み。そしたら火宮さんたちとバカンスだ」
ふふ、と堪えきれない楽しみな笑いが漏れる。
「クックックッ、どうした、1人でニヤニヤして」
不意に、後ろから火宮の声が聞こえたと思ったら、コツンと頭をつつかれた。
「うわっ。あー、上がったんですね」
「あぁ」
湯上りの、バスローブ姿でブランデーグラスを片手に目を細める火宮の、色気といったら半端ない。
「ふっ、なんだそんな目をして。さっきの笑いは思い出し笑いか?」
欲情が浮かんでいる、と揶揄われて、俺はパッと火宮から目を逸らした。
「そんなことっ…」
あるわけない。
「クックックッ、だがこれ以上したら、明日足腰が立たなくなる」
「っ、だからしませんって!」
「そうだな。終業式まで休ませるようなことになったら、あの小舅にどれだけネチネチと嫌味を言われるか」
それは面倒くさい、と笑いながら、火宮が俺の向かいのソファに座った。
「本当…」
S!S!どS!
「ククッ、懲りないな」
「っーー!言ってませんっ!」
その目がな、なんて言われたって、知らないんだから。
「クックックッ、本当におまえは」
うっ…。
ふわりと突然緩むその顔、反則だから。
愛おしいって気持ちがダダ漏れた、優しく細められた瞳とかズルすぎる。
「っーー!」
もう、どうしてくれよう、この人。
無自覚なのか計算なのか、さっぱり読ませない態度で、カランとグラスを鳴らして、ゆったりとお酒を呷っているその姿に、目眩すらしてくる。
「あぁ、もうっ。振り回されすぎ」
「どうした」
「べっつに!あなたが罪だって話です」
「クックックッ」
ゴクッと喉を上下させて、ブランデーを飲み下した火宮が妖しく笑う。
「っ…」
そうだよね。この火宮に限ってね。
計算抜きに、思わず表情筋を動かしちゃった、なんてことないよね。
「ん?」
「いいえ…」
でももしそうだったら嬉しいなー、なんて。
「ふふ」
別に、好きに解釈するくらい、俺の勝手だし。
「だからなんだ」
「いいえー。それより、火宮さん」
「なんだ?」
「及川さん…。及川さんがいなくなって、明日から俺の送迎の運転手さんって」
やっぱり変わるんだよね?
せっかく慣れていたのに、と思うと、明日から少しだけ気が重い。
「あぁ、人選は真鍋に任せてあるが、多分、日替わりになるだろう」
「へっ?」
「おまえが必要以上に情を移さないようにな。専属はやめだ」
「えーっ!」
それって毎日違う人が来て、慣れるも何もないってこと?
「なんだ。不満か?」
「いえ…」
だけど俺の足に、そんなに何人もの人を割いていいんだろうか。
「ククッ、むしろ立候補者がいすぎて、選定するのが大変なくらいだそうだぞ」
部下どもをくまなくタラシやがって、とシニカルに笑う火宮が怖い。
「っーー!そんなの知りませんよっ」
「ふっ、まぁ、うちの姐が不人気よりは人気があっていいことだが…」
「だから姐って…」
「くれぐれも、無駄に懐くなよ?」
「………」
出た。その強烈な独占欲と嫉妬心。
新しい人に俺を会わせる度、よくも飽きずに同じ忠告が出来るものだ。
「翼」
「はいはい。必要以上に仲良くしませんー。約束しますー」
まったく。俺は誰と知り合っても、誰と関わり合いになっても、他の誰でもない、あなたのものなのに。あなただけの。
分かっているくせに、向けられる独占欲と束縛が、なんだか可愛くて嬉しくて。
「その口調…。おまえは」
ニヤリ、と唇の端を持ち上げた、火宮の悪ぅい表情に嫌な予感がする。
「なるほど。今夜は寝られなくなってもいいらしい」
「っ!待って。だって真鍋さんが…」
小言を言われるのが嫌だから、今日はもうしないんじゃなかったのか。
「ふっ、あいつの小言より、おまえの躾が優先だろう?」
「っ、待って!それ、優先順位、絶対おかしいです!」
抱き潰すより、登校が優先でしょう?
「まぁそう遠慮するな」
「遠慮じゃなくて、本気でお断り…」
あぁでも好きだな、愛おしいな、って思っちゃった俺の気持ち、この火宮なら見透かしているんだろうな…。
「ククッ、じゃぁやめるか」
「っ!」
だから、このどS!意地悪火宮!
「っ、やめ、ない…」
あー、もうどうにでもなれ。
どうせ俺の目は、もう強請るように熱く火宮を見つめちゃっているんでしょう?
艶やかに妖しく、綺麗に弧を描いた火宮の目と口が、その答えを雄弁に語っていた。
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