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そうしてワイワイと、みんなでバーベキューを楽しんだ俺は、大満足で火宮の元に帰っていた。
「あー、お腹いっぱい」
「ククッ、満足したか」
「はいっ。すっごく楽しかったです」
「それは良かった」
満足の笑みを向けた俺に、火宮の目が穏やかに細められる。
「ありがとうございました」
「クッ、おまえが楽しかったのならそれでいい」
ポン、と頭に乗った手が、優しくて温かくて、なんだかふわふわと幸せだ。
「ではいい加減、俺の我儘も聞いてくれるか?」
ニヤリと唇の端を吊り上げるその顔に、俺は一も二もなく頷いてしまう。
「はいっ」
「ククッ、ならば、行くぞ」
「はい。でも行くってどこへ?」
後片付けとか、みんなに任せっぱなしでいいのだろうか。
チラリと部下さんたちや豊峰たちを振り返った俺は、火宮にグイと肩を抱き寄せられた。
「っ…」
「気にしなくていい。それよりも、ほら」
ふらふらと火宮に従って足を進めた俺は、別荘の裏手の門から外に連れ出される。
両脇が芝と林になっている坂を下りていけば、海辺に出た。
「っ!あれ…」
思わず目がまん丸になる。
「ククッ、どうした」
「え、だって、いやまさか。あれって、クルーザー?」
海に突き出た桟橋の横。ドーンと存在を主張するクルーザーが俺たちを出迎えるように泊まっていた。
「あぁ。乗るだろう?」
「えぇっ、火宮さんのですか?」
「あぁ。ほら…」
丁寧にエスコートされて、桟橋まで下りていくけれど…。
「運転できるんですか?」
「ククッ、まさか。船舶免許はさすがにない。ちゃんと小型船舶操縦士の資格を持っている部下が中に乗っている」
「ほぇー」
操縦士付きか。
さすが火宮様。
「ほら、どうぞ、奥さん」
「奥さんって」
「ククッ、これから2人でクルージングだ」
「うっわぁ!」
すごい!広い!
「えっ、なにこれ。もう家じゃないですか!リビングにソファ、嘘!キッチンまでありますよ?」
タタッと乗り込んだクルーザーの内部は、本当にマンションの室内のようで。
「しかも窓の外は海!えっ?こっちはお風呂ですかっ?」
まさかのバストイレ付き、絶景のオーシャンビュー。
「ククッ、下には寝室もあってベッドもある。上は甲板にも出られるぞ」
「うはぁ」
すごい。
船の価値なんてよく知らないけど、これはものすごく豪華な部類に入るもので、何億とかするんじゃないだろうか。
「ククッ、気に入ったか?」
「すごいです」
馬鹿みたいにその言葉しか出てこない。
「ほら、まずはソファにでも落ち着いて、飲み物でもどうだ」
ノンアルコールカクテルなら作ってやるぞ、と火宮が向かったのは、キッチンの片隅にあるバーカウンターで。
「うわぁ」
本当、すごい。
もうそれ以外の言葉を忘れてしまったみたいに、「すごい」ばかりが口をつく。
『ククッ、これからここでサンセットクルーズだ。そしてたっぷり可愛がってやる』
「火宮さん?」
ニヤリと笑ってボトルを選び始めた火宮から、なんだか不穏な空気が漂っている気がした。
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