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「っちょ…」
だから、あなたは…。
カシャン、と両手首に嵌められた、明らかにプレイ用の手錠を見下ろし、俺はげっそりと脱力した。
「ククッ、翼。さて、看守と囚人ごっこでもするか」
「はぁ?」
「それとも、ご主人様と奴隷プレイがいいか」
「……」
「飼い主とペットにするか?」
この人はぁぁぁっ!
ポイ、ポイ、と、次から次へと持ち出される、鞭とか制帽とか、犬耳カチューシャとか尻尾付きバイブとか。
一体それは何なんだ。
いや、その前に…。
「あの…ここ、会長室ですよね?」
「そうだな」
「執務場所ですよね?」
「あぁ」
「っ、そこにっ、なんでそんなものたちの用意があるんですかっ!」
シラッとしているけど、おかしいから!
普通、仕事場に、そんないかがわしい道具類は置いてないから!
「ふっ、突っ込むところはそこなのか」
ニヤリ、じゃなくてね…。
「まぁ細かいことは気にするな」
「っ…」
気にするでしょう?普通!
「で?どれがいいんだ?よそ見をする悪い恋人を俺に繋ぐには…」
「っーー!」
だから、それが囚人とか奴隷とかペットとか、どういう思考回路をしているんだ、この人は。
「やはり躾けと言っても、愛でてはやりたいからな」
これか、と、悪ぅーい笑みを浮かべた火宮が、スッと手を伸ばしたのは、先ほど散らかした妖しい道具のうちの1つで。
「っ…」
さらにどこからともなく取り出された、赤い、金属のバックルがついた、ベルトのようなその物体は…。
「安心しろ、ちゃんと人間用のプレイ用だ」
「っーー!」
そのどこに、安心する要素があるのか、ぜひとも教えてもらいたい。
ニヤリとサディスティックな笑みを浮かべた火宮が、笑いながらゆっくりと見せびらかしたそれは、いわゆる首輪というもので。
どうやら本当の犬用ではないらしいことは、くだらない嘘などつかない火宮の言動を知っていれば明らかなんだけど。
「ふっ、うっかりよく知りもしないよその男にフラフラ懐いた浮気者めが」
「っ、それは、だからっ…。俺は…」
「ククッ、俺だけだって?ならば証明してもらおうか。主人にしか懐かない、忠実な犬の恰好をしてな」
「っーー!」
あぁ駄目だ。
こうなった火宮の止め方は、俺にはもう分からない。
いくら俺が火宮だけだと言ったって、アキはあくまで友達だと言ったって。
独占欲と嫉妬心が異常に強いこの人の、こういうことに関しての心の狭さは、半端ない。
「さぁ翼、大人しく首を差し出せ」
「はぁっ…」
本当、どうしようもない。
その執着心が、束縛が、俺もうっかり嬉しいんだもんな。
「これはいよいよどMかな…」
ははっ、と乾いた笑いを浮かべてしまいながら、俺はゆっくりと顎を持ち上げ、首元を火宮に晒す。
「ふっ、華奢なおまえの首に、よく映える」
「このどS…」
かちゃ、と嵌められた首輪は、何故か俺にピッタリサイズで、満足げに目を細めて俺を見下ろす火宮の顔が、やけに楽しそうだから、なんか色々とどうでもよくなってくる。
「さて翼。あぁ、手錠を先に嵌めてしまったから、上は脱げないな…」
ぬかった、と笑う火宮の目が、意地悪くスゥッと細められる。
「っ…」
「仕方がない、下だけ脱がして、これを挿れてやろう」
ニヤリ、と笑った火宮が、それはそれは妖艶に、尻尾付きバイブを手に取って、チロリと赤い舌を覗かせた。
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