アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
26
-
「ふぅん」
え!ふぅんって、それどっち?
ダイニングテーブルの向かいで、カレーライスを一口食べた火宮を見つめてしまう。
「翼?食べないのか?」
「え、いや」
食べますよ?食べますけど、今はね。
知らなかった。
人に料理を作って食べさせることが、こんなに緊張するなんて。
自分が食べるのもそっちのけで、その反応が気になるなんて。
「うん」
二口目を口に運んで頷くだけの火宮からは、いいも悪いも伝わらない。
だからどっち!
吐き出したり、嫌な顔もしないということは、少なくとも不味くはないのだろうけれど。
美味しいとも言ってくれないことに、何だか少しがっかりする。
って俺、何期待してるんだろう…。
「翼?もしかしておまえ、カレー自体が嫌いなのか?」
「え?」
怪訝な火宮の目が向いて、俺は自分で配膳した、ちゃっかりにんじん抜きのカレーライスを見下ろした。
「いえ。そんなことないですよ」
まさか、火宮の反応が気になって食べるどころではないなんて言えない。
あわよくば、美味しいなんて言って欲しかっただなんて。
「いただきますっ!」
慌ててこんもりとスプーンに掬ったカレーは、とっても熱かった。
そしてごく普通の美味しいカレーだった。
「ん…」
黙々と進んでいたスプーンを、不意に火宮が置いた。
見れば皿の上は綺麗に真っさらだ。
「あ…。あの、おかわりします?」
「あるのか」
「あ、はい」
市販のルーの半分で作ったとはいえ、4、5皿分くらいはある。
残れば明日の朝も、なんて思っていたくらいだから、おかわりも十分だ。
「じゃぁもらおう」
ズイッと突き出された皿は、本当に米粒1つ残っていない。
足りなかったのかな。それとも…。
特に表情に変化のない火宮には、期待しないほうがいいとは分かっている。
分かっているけど、こうも綺麗に食べてくれて、おかわりまでしてくれるとなると、ついうっかり期待が浮かぶ。
「なんだ」
「いえ…」
思わずジーッと見つめてしまっていた俺は、慌てておかわりを用意した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
26 / 781