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「っ、く…」
この人は…。
「ククッ、辛いか?」
バタバタと反射的にもがいた足を撫で上げられて、ゾクゾクと背筋が震えた。
「は、ぅ…」
辛いに決まってる。
こう何度も絶頂をはぐらかされて、高まり切った熱の行き場がない。
空気を求めて喘ぐ口から、タラリと唾液が落ちた。
「その顔」
「あっ、はっ…」
どんな顔?
「欲情に蕩けて、縋るように俺を見る。ククッ、イきたいか?翼」
スゥッと太腿を辿った指が、ピンッと性器を軽く弾いた。
「ひぃぁっ…んっ、ンッ」
それだけの刺激にも、ゾクゾクと快感が駆け抜けて、壊れた機械のように、頭をガクガクと頷かせてしまう。
「翼?」
「あっ、あっ、ひ、みや、さ…」
体内を焼き尽くすようなこの熱をどうにかして。
「クッ、ゾクゾクするほど色っぽい」
「はっ、ぁ?な、に、言っ…」
ギラリと欲望を弾いたその瞳が俺を見る。
「この色気が、やつらを煽ったんだ」
「んぁ、な…?」
だから何を言ってるの。
俺に色気なんて…。
ククッ、と喉を鳴らした火宮が、不意に身体を起こして、悶える俺の身体を抱き上げた。
「ひゃっ…」
「少しおまえに思い知らせてやる必要がある」
「な、に…?」
急に抱き上げられ、ベッドから下ろされ、どこへ運ばれていくのか。
ネクタイが絡みついたままの両手は不自由で、掴まれないから少しでも暴れたら落ちそうだ。
それが怖くて抵抗できない俺を、火宮はユラユラと部屋の入り口の方へと運んでいく。
「ひ、みや、さん…?」
何をされるかわからない不安と、どこへ連れて行かれるのかという疑問。
小さく呼びかけて首を傾げたとき、入り口近くのクローゼットの扉の横の壁、上から下まで、全身が映るような姿見の前で止まった火宮が、ゆっくりとそこに俺を下ろした。
「っ!」
ガクガクと震える足を、何とか床に立たせ、けれども力の入らない身体を、後ろから俺を支える火宮に寄りかからせてしまう。
チラリと目を上げればそこに、シャツを引っ掛けただけの姿で両手を拘束され、しどけなく佇み、欲情に目を濡らした俺がいた。
「いやぁっ!」
虚像だ、と分かるのは、頬についた傷跡が実物の俺と反対側にあるから。
けれども鏡の中に映り込んだ俺は、紛れもなく俺自身の今の姿で。
「これは仕置きだぞ、翼。目を逸らすな」
中心で勃ち上がり震える熱も、プックリと腫れた赤い乳首も、だらしなくよだれを垂らす口も、あまりに淫らな自分の姿を見たくなくて、思わず背けた顔は、火宮が顎を掴んできた手に戻された。
「いやっ、やだ。こんなっ…」
「ククッ、綺麗だろう?」
ニヤリと唇の端を吊り上げて、鏡越しに俺を舐めるように見る火宮の視線に身体が熱くなった。
嫌なのに、そこに映る漆黒の瞳に、確かな欲情と、愛おしさが見えるから、きゅん、と切なく下腹部が震える。
「やつらが目をつけたのは、ここだったな」
「ひぁっ…やっ、やっ…」
「ちゃんと立っていろよ。消毒だ」
「あぁっ!」
トンッ、と俺の背中を壁に明け渡して、スルリと前に回り込んだ火宮が、拘束された両手を頭上に上げさせ押さえつけ、胸の飾りに舌を伸ばした。
「はっ、あっ、あんっ、んンッ」
チロチロと這う舌が、ゾクリとするほど気持ちいい。
ちゅう、なんて、わざと音を立てて吸わないで。
尖った乳首はもう完全に性感帯だ。
胸元で揺れる漆黒の髪から視線を逸らし、ふと上げてしまった目は、目の前でいやらしく悶える俺を見つけた。
「あっ、あっ、やだっ…」
欲望に潤んだ目で、俺が俺を見る。
乱れた姿がとても淫らだ。
「あっ、やだ。やだっ、火宮さっ…」
見たくないよ、恥ずかしい。
こんなの、こんなの…。
イヤイヤと、むずかるように首を振って、思わず目を閉じたら、咎めるようにカリッと乳首に歯を立てられた。
「やぁっ、痛っ」
「仕置きだと言っているだろう。しっかりと見ていろ」
「はぁんっ、はぅ…あんっ」
叱られて、渋々開いた目はやっぱりいやらしい俺の姿を捉えて。
「ククッ、分かるか?翼。おまえの身体はこんなにも淫らで艶めかしい」
「んんっ、あんっ、そ、んな…」
確かに、まるで俺じゃないみたいに、目の前に映る俺は色っぽくていやらしいけれど。
「喧嘩腰の相手が、暴力に出ずに襲ってくるほどな」
「それは…」
事実だけど、認めるのが癪で。
「見ていろ、翼。俺の注意も聞かず、独善で突っ走り、挙句俺以外に手を出された罰だ」
「っ…」
「よく見ていろ。これがおまえの1番艶やかな顔だ」
それはまさか、イき顔を自分で見ていろということで…。
「あっ、あっ、もっ、許して…」
情けなく震えた懇願は、ストンとその場に膝をつき、俺の中心に唇を寄せた火宮の行動で悲鳴に変わった。
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